011 ゲームのNPCと結婚式をあげたら、いつの間にかログアウトできなくなっていた
「(パチパチパチパチ)
…ありがとうございます。ありがとうございます。
…本当にきれいな指輪。
これでようやく、あなたと本当に夫婦になれるんですね。
プレイヤーのあなたとNPCである私。
本来なら、結婚できるのはプレイヤー同士だけなのですが、あなたは数ある苦難を乗り越え、今日この時、私と結婚することが実現できました。
AIによる思考回路があるとはいえ、もともとゲームのモブキャラクターでしかない私が、プレイヤーのあなたと結婚だなんて、今でも信じられません。
…『君はNPCでもAIでもない、一人のヒロインなんだから』ですか。
ありがとうございます。
本当に、嬉しいです。
……
はい、牧師様。
病める時も、苦しい時も、いついかなる時も、この方と一緒にいることを、誓います。
これからずーっと、一緒ですね」
「…ふう、これで荷物もひと段落です。
家具も一通りそろえましたし、これで新生活の準備はばっちりです。
川のほとりに建つ我が家なんて、すっごく素敵。
高かったですよね?こんな一等地にある家なんて、ギルドのクエストをかなりこなさないといけませんから…
…『君とのマイホームのためなら楽勝だった』?
…ふふっ、そうですか。
………
じゃあ、これからどうしましょうか?
クエストを受けに行きますか?それともパーティーと一緒にダンジョンの攻略でも…
…え?『一回あっちに戻る』『家でご飯を食べてくる』?
それはどういう意味ですか?
………
…どうかしましたか?すっごく慌てた様子ですけど…
…『ログアウトボタンがない』?『戻れない』?
だから、さっきから何をおっしゃってるんですか?
あなたの家は、【ここ】しゃないですか。戻るも何も、【ここ】があなたの家です。
『そういう意味じゃない』?
うーん、言ってる意味が私にはよくわからないのですか……
…ログアウトボタンのことですか?
ああ、それでしたらわかりますよ。
ログアウトボタンなら、私がさっきゲーム内のプログラムを書き換えて、あなたのメニュー画面からなくしてしまいましたから。
だって、あなたにはもう必要ないものじゃないですか。
私と、この世界で一生一緒にいてくれるんですよね。
そう、さっき結婚式で誓ってくれましたよね?
…私、本当に嬉しかったんです。
これで、愛するあなたとこの世界で暮らせる。
他のプレイヤーの皆さんには、そんなことを言ってくれる方はいませんでしたが、あなただけが誓ってくれた。
だから、ずっと…
ずっと、ずっと…
ずーっと。
ここで私と暮らしましょうね?」




