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107 プロジェクト成功の打ち上げ。絶対飲まないという上司にお酒を勧めてみたら…

「………お疲れ様。

(チャンッ)

(ゴクゴクゴク)

…ふう。ようやく一息つけるわね。

今回のプロジェクトが成功したのも、みんなのおかげだわ。

………私一人の力なんて大したことないわよ。

チーム一丸、皆が皆成功のために全力を出したから、成功した。

それだけの話。

こうして皆揃って飲みの場ができたのも、ひいては皆の力あってこそよ。

………そう。あなたはそう言ってくれるのね。

ありがとう、とお礼は言っておくわ。

上司だからって、みんな気を遣ってるのかしらね。

あなた以外にはそんなこと言ってくれる人、いなかったし。

(ゴクゴク)

………ああ、これ?

ウーロン茶だけど?

ううん、別にお酒が飲めないわけじゃないんだけど…

………私って、お酒飲むとかなり悪酔いするらしいのよ。

それで親に説教されてから、外では飲まないようにしているの。

…さあ?

お酒飲んでる時の記憶はほとんどないのよね。

だからどんな風に酔うのかは、自分ではあんまり把握してないわ。

………お酒はまあ、嫌いではないけど。

この店、珍しいお酒もあるみたいだし、ちょっとだけ興味がなくもないわね。

………いいわよ。別に。

酔って皆に迷惑かけたら大変だもの。

せっかくのプロジェクト成功の打ち上げなんだから、その雰囲気を壊したら問題だしね。

………面倒見るって、一上司にそこまで気遣う必要ないんだけれど…

まあ、君がそこまでいうなら、ちょっとだけ飲んでみようかしら。

………すいませーん。

ハイボール一つください」




「(ドサッ)

よーっすよっす。

君も飲んでる?

………私はたくさん飲んでるよ。

(ゴクゴクゴク)

…うーん、おいしー!

………すいませーん、同じのお代わりくださ―い!

………飲み過ぎ?

ううんううん、全然飲み過ぎてなんてないよ。

このグラスでー、1、2、3………

うん、10杯くらい飲んだだけ。

それに飲んでいいって言ったのは君だよ?

君が面倒見るっていうから、私はこうしてお酒を飲んでるの。

言った言葉にはちゃんと責任持たなくっちゃダメだよー。

(………)

お、新しいの来た。

(ゴクゴクゴク)

………ふう、体にしみこんでくる…

…そうそう、今回のプロジェクトは実にご苦労様だった。

君の活躍なくしては、絶対成功しなかっただろうね。

………ううんううん。

私なんてみんなにああだこうだ仕事振ってただけだし、全然活躍なんてしないよ。

君の以外の連中もミスばっかりだったし、そっちのフォローに苦労したした。

…うん。君がいなかったらプロジェクトは絶対絶対成功しなかったなー。

普段の仕事ぶりも真面目で、君は本当に頼りになる部下だよ。

私の自慢の部下だ。

(わしゃわしゃ)

…ん?褒めてあげてるんだから撫でられろ撫でられろ。

こういう時でもなきゃ、君を撫でるなんてできないしな。

………ん、よっと。

…ん?トイレだよトイレ。

いちいち聞くなバカ者。

…それともなにか?付いてきたいのー?

………ハハハッ!

冗談冗談。

じゃあちょっと、お花摘んでくるね」




「(スタスタスタ)

………うー。もう飲めなーい………

でも飲みたーい………お酒持ってきてー

………って、あれー?

外だー?

おーい、私をおんぶしてるのは誰だー?

(………)

おー、君かー。

なんで私は君におんぶされてんだー?

…ほー、ほうほう、ほー。

ほー。

…うん?うちの住所―?

うちの住所はー………

って、やだやだー!

私の家めっちゃくっちゃ散らかってるの―!

だから家に来てほしくなーい!

特に君はあの家は見せたくなーい!

………うーん?

君ん家でいいじゃんいいじゃん。

私の家に来てほしくないしー。君の家には行ってみたいしー、ほら、一石二鳥だから!

………んー?

別に君ん家ならいいよー。

他の人の家なら嫌だけどー、君の家ならオールオッケー!

だって私、君のこと好きだしー。

…最初の最初はー、ぜんっぜん仕事も覚えないしミスばっかりで、使えない奴って思ってんだけどねー。

でもだんだん仕事も覚えてきてー、ミスしないようになっていってー。

他の人のフォローにまで回るようになってー、すごいカッコいいなーって思ったんだよねー。

………そうそうそうそう。

2年前に君の同僚が書類のミスで部長に大目玉食らった時、「自分のせいです」って言って一緒に怒られてたよね。

他の人のためにそこまでできるんだなーって、感心したよー。

あと単純に、君の顔って私の好みだしー、好きにならない方がおかしいって―。

だから君の家行こー行こー。

………ほら、そこ角は曲がるんだろー?

…もっちろん、君の家のことは知ってるさー。

上司の権限をなめるなよー。

上司の力をもってすれば、君の個人情報を知るなんてわけがないのさー。

………なーにしよっかなー。

なーにしよっかなー。

君の家でなにしよっかなー。

初めてのお泊りお泊り―。

わーくわーく~♪

わーくわーく~♪

お泊りお泊り―!」




「(チュンチュン)

(ガバッ)

………うっ、頭が痛い…。

っていうか、どこなのここは………?

確か昨日はプロジェクト成功の打ち上げがあって、それから………?

………ん?

なぜ、歯ブラシを手に持っているのかしら…

…というより、この部屋はひどい有様ね…

強盗でも押し入ったかと思うくらいの荒れ具合だわ。

家具や棚は押し倒されて、服やごみが散らかっているし。

………ん、床や壁に何か書いてある。

これは…「ス」と「キ」か………

それとこっちには………うーん、私の名前かしら?

ミミズがのたうったみたいで全然読めないけれど。

なんでそんなものが部屋中に………?

………というか、本当にどうして私はここにいるんだろう?

(………)

………!

そ、そこにいるのは、君なの?

ど、どうしたの?

なんで君が、そんなところで全身を縛られてるの………?

しかも顔や口が真っ赤になってる。

虫に差されたにしては形は大きくて数も多すぎるし、本当に一体何が………

うーん、わからないけれど、ひとまず君を起こしてからの方がいいわよね。

おーい、君、朝だよー。早く起きて」

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