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105 ツンツンしている義妹は兄のことが好きすぎて観察日記を…

「(ドキドキドキドキ)

…緊張するなあ。

どんな人なんだろう?

(バタン)

…あ、その。えっと………

はじめ、まして…

あなたが、お兄ちゃんになる人、ですか………?

………あ、はい。そうです。

これから妹として、よろしくお願いします」




「(バタン)

ふう…

プリン♪プリン♪プリン♪

(バタッ)

………って、あれ?

ない………。

ねえお兄ちゃん。

また私のプリン勝手に食べた?

………嘘。

じゃあなんで冷蔵庫のプリンなくなってるの?

朝見た時にはあったんだから、犯人お兄ちゃんしかいないじゃん。

…ちぇー、せっかく楽しみにしてとっておいたのに………

………最初に3個あろうが5個あろうが、この家のプリンは全部私のものなの。

私の許可なく勝手に食べないでよ、もう。

………いいよ、買ってこなくても。

私は今あのプリンが食べたかったの。

あのプリンじゃなきゃヤダもん。

…ったくもう、イライラするなー。

(ドサッ)

(タッタッタッタッ)

(シュッシュッシュッシュ)

………

………

………

…ちょっと、人のスマホ勝手にのぞこうとしないでよ。

………はあ?何見ようが私の勝手でしょ。

人のプライバシーに入ってこないで。

これだからお兄ちゃんはデリカシーがないんだから。

そんなのだからお兄ちゃんは女の子にモテないんだよ。

お兄ちゃんはどうせ一生独身童貞のまま、一人寂しく暮らしていくんだろうね。

…はっ。

お兄ちゃんに彼女なんかできるわけないじゃん。

こんなだっさだっさのお兄ちゃんに彼女なんて、1億年早いっつーの」




「(………♪)

(タッタッタッタッ)

(シュッシュッシュッシュ)

………

(バタン)

………

…ねえお兄ちゃん。

私今、ここでテレビ見てるんだけど?

…何って。それはこっちのセリフ。

なんでお風呂上りにそんな恰好でうろうろしてるの?

服も着ないでタオルまいただけどか、変質者かなんかなの?警察呼んでもいい?

…自分の家もなにもないでしょ。

ここはお兄ちゃんだけの家じゃないんだからね。

私がいるってこと忘れてるの?

………ったく、ちょっとは気使いなさいよね。

いくら兄妹同士だからってさ、私だって年頃の女の子なんだから。

(カシャッ)

………

…何?

別に、テレビ見ながらスマホいじってただけだど。

とにかく、お兄ちゃんは早く服着てきてよ。

いつまでもそんな恰好で家の中うろうろしないで。

(カシャッ)」




「(コンコン)

(コンコン)

(バタン)

………何勝手に入ってきてるの?

…ノックしたからって、私が返事してないんだから入っちゃダメっていうのがわからないの?

………あー、はいはいはい。

兄妹だもんね。そうだね。お兄ちゃんは私のお兄ちゃんだもんね。

それで、何の用?

…あー、辞書?

そういえば借りてたの返してなかったねー。

机のところにあると思うから持ってけば―。

………

………

………

(ペラ、ペラ、ペラ)

…ねえ、お兄ちゃん用事済んだのならさっさと………って。

お兄ちゃん何読んでるの!?

返して!今すぐそれ返して!

(バシッ)

………ねえ、見た?見た?

………

…あー、なんで机の上に置いちゃってたんだー、私…

………

…そうだよ。

表紙のところに書いてあるでしょ。


『お兄ちゃん観察ノート』って。


お兄ちゃんの普段の行動とか、しゃべった言葉とか、そういうのが書いてあるの。

それと、お兄ちゃんを撮った写真かも全部貼ってあるの。

………なんでって、それは………

…好きだからに決まってるじゃん。

………この家に来るまで、私はずっと家に一人ぼっちだった。

お母さんが夜遅くに帰ってくるまで、ずっとずっと、一人だった。

友達とかと遊んでも、友達と電話しても、夜なればいつも一人きり。

でもお母さんが再婚してからは、いつも、お兄ちゃんが一緒だった。

勝手にデザート食べたり、お風呂上りに服着ないでうろうろしたり、いつもズケズケもの言ったりしてデリカシーがないダメな人だけど、それでも、私と一緒にいてくれた。

そんなの、好きにならないわけ、ないじゃん………

…でも、私は家族だから、妹だから、我慢しなきゃって思ってた。

でも我慢ができなくなってきて、お兄ちゃんの行動や姿を、ノートとかスマホとかカメラで記録するようになったの。

お兄ちゃんのことを知れば知るほど、ますます好きになっていった。

これまでは、それで我慢できてたんだ…

………でも、バレちゃったらしょうがないよね?

バレない内はノートや写真でなんとか我慢できたけど、でももう、お兄ちゃんは私の気持ちを知っている。

だからもう、遠慮なんてしないから。

お兄ちゃんの言った言葉。食べた食べ物。起きた時間寝る時間。勉強した時間。シャワー浴びた時間。テレビを見る時間。ゲームする時間。

笑った顔。怒った顔。泣いた顔。嬉しい顔。悲しむ顔。びっくりした顔。寝起きの顔。眠っている時の顔。真面目な顔。気の抜けた顔。

全部、記録していってあげる。

おはようからお休みまで、お兄ちゃんの行動はすべて、私が見ていてあげるから。

大好きだよ。お兄ちゃん。

何もかも、全てを知りたいくらい、ね」

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