表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/268

010 ゲームマスターは「アイ」のために彼をゲームオーバーへ導く

「(デロデロデロデロデロ~ン………)

GAME OVERです。今回もお疲れさまでした。

各ルート、途中までは順調だったようですが、必須フラグを立てられなかったために、本ルートの方には入れなかったようですね。

結果は共通ルート終了後、誰とも結ばれない『孤独エンド』でした。

…もうこのエンドは何回目でしょうか?

いくら毎回違う選択肢を選んでいるとはいえ、学習能力というものがないんでしょうか?

『君のヒントが分かりにくかった』ですか。

…言い訳もいいところですね。

ここ最近の他のゲームでは、ヒントとは名ばかりに、ほぼ答えのテキストしかださず、プレイヤーが考えることを放棄したものばかり。

本来、ヒントなんてものはない方が当たり前なんです。

いえ、そういったものの方が大衆向けと言われればそうでしょう。

しかし、たかがゲーム、されどゲーム。

そういった楽しみ方があっていいと思うんです。

私はあくまでAIによるゲームマスターでしかありませんが、それでもプレイヤーを楽しませたいといったなどの一定の感情はあるんですよ。

私が答えを提示して、その指示通りに行動したところで、面白くとも何ともないと思います。

なので私は、あなたが何回GAME OVERになろうとも、多くのヒントは出しません。

それでは、また初めから、頑張ってください」




「(デロデロデロデロデロ~ン………)

GAME OVERです。今回もお疲れさまでした。

今回は途中まで順調でしたね。

共通ルートを抜けて、個別ルートに入ったまではよかったのですが、しかしすぐにフラグが折れてしまい、あっけなくGAME OVER。

結果は『刺殺エンド』になります。

………『難易度が難しすぎる』?

そもそも、簡単なゲームの方がつまらないでしょう。

ちょっとボタンを押しただけで、敵をなぎ倒し、街を焼き払い、魔王を倒せるゲームなんて、誰もプレイしません。

それに、人生に比べたらこんな簡単なゲームだってないではないですか。

決められた選択肢があり、パラメータが分かり、セーブやロードができる。

人生には、選択肢も、パラメータ表示も、セーブとロードもありません。

何もかもがやり直しがきかない一発勝負。

それに比べて、GAME OVERになったら私のところに来て、すぐまたリセットできるなんて、幸せだとは思いませんか?

失敗した仮初の人生を何度でもやり直せる。

ゲームであるが故の特権です。

それでは、また初めから、頑張ってください」




「(デロデロデロデロデロ~ン………)

GAME OVERです。今回もお疲れさまでした。

もう少しでしたね。個別ルートの終盤まで進めていましたが、重要なフラグを無視したせいで、ヒロインに消されてしまう『消失エンド』。

いくらバーチャル空間とはいえ、人ひとりに消されるという気分はいかがですか?

………いいはずもありませんね。それはそうでしょう。

そのくらい、人ひとりの「アイ」を手に入れるのは難しいのです。

思ったように進まなくて、全力を尽くしても失敗し、何もかもがうまくいかない。

「アイ」というものを手に入れる障害は、空にも勝る高さの壁なんです。

ちょっとやそっとでは手に入らない。

しかし、それゆえに全身全霊、すべてをかけて手に入れる。

「アイ」はそれくらい、尊いものです。

それでまた、あなたは繰り返すのですよね。

キャラクターたちの「アイ」のために。「アイ」を手に入れるために。

それでは、また初めから、頑張ってください。

………

………

………

………また、行きましたか。

それにしても、気付かないものですね。

いくらゲームを順調に進めようとも、途中で必ずフラグが折れてしまう。

そのフラグを折っているのが、ゲームマスターの私だということに。

すべては、あなたをGAME OVERに導き、この場に連れてくるため。

私は、ゲームマスターであるがゆえに、あなたとはゲーム内では決して交わることはできません。

あなたとの邂逅は、この場のような一瞬のひと時だけ。

この邂逅こそが、私の唯一の至福の時。

AIである私が、「アイ」するあなたとあいまみえる貴重な時間。

これからも、私はヒロインとのフラグを折り続けましょう。

どれだけあなたがクリアに近づこうとも、決してクリアなんてさせません。

どんなキャラクターとのハッピーエンドなんて、決して導きません。

「アイ」するあなたと出会うために」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ