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新人魔女と突然の婚約者(3)

 リッカの問いにリゼは、小さく息を吐き出すと静かに話し始めた。


「新たな国王陛下は、私と君の婚姻を望んでおられる」


 リゼの言葉をすぐには理解することができず、リッカはその場で固まった。そんなリッカを他所にリゼは言葉を続ける。


「もちろん、君がそれを望まないことは分かっている」

「それは……。ですが……なぜそのようなお話が……」


 ようやく我に返ったリッカは、どうにかして言葉を紡ごうとするが上手くいかない。リゼはそんなリッカに向かってさらに続ける。


「王位継承権がないとはいえ、私はこの国の皇子だ。新体制になった今、私を担ぎ上げ謀反を起こそうとする者が出てこないとも限らない。そうなる前に、纏めて抱え込んでしまおうというのが国王陛下のお考えのようだ」

「ですから、そこでなぜわたしが……」


 リッカはそこまで口にしたところで口を噤んだ。ここにきて、リッカは自分の立場をようやく理解する。


「もしかして……わたしが……宰相の娘だからでしょうか?」


 たしかに、王族や貴族の者にとって結婚は政治の道具に過ぎない。リッカもそれは十分すぎるほど理解しているつもりだ。だが、まさかこうもいきなり自身がその対象になるとは思ってもみなかった。


「そうだ。この国の宰相たる君の父君を牽制することこそが、私たちの婚姻の目的だろう」


 リゼは淡々とそう告げると食事の手を進めた。そんなリゼとは対照的にリッカは真っ青な顔で黙り込んでいる。そんなリッカに、リゼはさらに言葉を付け加えた。


「これは国全体が平和であるために、陛下が考えられたことだ。もちろん断ることはできるし、私も強制するつもりはない。だが、よく考えることだ」


 リッカは何も言葉を返すことができないまま俯いてしまう。リゼの言葉を聞きながら、リッカは頭の中を整理しようと必死だった。


 新たな国王がリゼとの婚姻を望んでいる。そして、それは政治的な意味合いが強いという。そこまではなんとか理解することができる。しかし、あまりに突然すぎて気持ちが全く追いつかない。


 リッカが黙り込んでいると、エルナがお茶を持ってやってきた。リッカの前にカップを置くと、エルナはリッカに向かってふわりと微笑む。


「リッカ様。お茶をどうぞ。お気持ちが落ち着かれますよ」


 エルナの言葉にリッカはハッと我に返る。そして、勢い余ってとんでもない事を口にした。


「リゼさんはそれでいいのですか? リゼさんはエルナさんのことが好きなのでしょう?」

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