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新人魔女と使い魔の特訓(1)

 フェンの耳も尻尾もシュンと垂れ下がっている。どうやら、昨日聞いたグリムの話がショックだったようだ。そんな姿を見て、リッカは苦笑してしまう。


「リッカ様。本当にグリム様は魔法が使えないのでしょうか?」


 震えた声でフェンが問う。リッカはしゃがむと、フェンの頭を優しく撫でた。


 グリムは魔法が使えないと聞いて、使い魔の先輩としてグリムを尊敬していたフェンは落ち込んでいるようだった。グリムは何でも知っているし、何でも出来ると思っていた。そんなグリムが本当に魔法を使うことができないのか、フェンには信じられないことだった。


 リッカはそんなフェンを宥めるように、優しく声をかける。


「そうみたいね。でも、グリムさんはグリムさんだよ。今までと何も変わらない。私は、グリムさんは十分凄い使い魔だと思うわ。だって、グリムさんは私たちよりも、経験も知識もずっとたくさん持っているもの」


 リッカの言葉に反応して、フェンの耳がぴょこんと立つ。フェンは、静かにリッカを見つめた。しばらく沈黙が流れる。フェンは思うところがあるのか、何も言葉を発さない。リッカも、フェンが口を開くのをじっと待つ。ようやく腑に落ちたのか、フェンは明るい声を上げた。


「そうですね! グリム様はグリム様です」


 気持ちを切り替えたのか、ぴんと立った耳がぴょこぴょこと動く。そんなフェンの様子に、リッカは安堵の表情を浮かべた。


 リッカは、フェンがグリムに対して抱く感情がとても良いことだと思った。もちろん、使い魔として共に過ごしていく中で、先輩使い魔に敬意を払い慕うのはごく当たり前のことなのだが、他者の事を尊敬し、素直に受け入れることができることは、とても素晴らしいことだと思う。リッカは、フェンの純粋な心の成長を嬉しく思った。


 リッカは工房に着くと、日課になった朝の掃除を手早く始めた。今日は、工房主であるリゼから急ぎの用事を言い渡されなければ、フェンの魔法の訓練をしようと思っていた。


 まずはリゼにフェンの訓練をしたい旨を伝えようと、工房の掃除を終えると、リッカはリゼの姿を探して工房の中を歩き回った。しかし、どこにもリゼの姿が見当たらない。工房のリゼの席はもちろん、寝室にも、食堂にもいない。


 リゼの姿だけではなく、いつもならこの時間は食堂でクルクルと動きまわっているはずのエルナの姿もない。リゼが工房にいない事はよくあることなのだが、エルナもいないというのは、珍しい。

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