新人魔女の魔道具製作(6)
リッカは鞄の中へ手を突っ込む。以前、属性判定用の魔道具を作っていたことを思い出したのだ。中央には小さなカプセルがあり、それを囲むようにしてそれぞれの属性魔力を宿した水晶がはめられた円盤形をした小さな道具だ。
リッカはそれを手に取り、フェンに差し出した。リッカの手にある物を、フェンはきょとんとした表情で見ている。フェンの反応を見たリッカは、これが何なのかを説明してあげなければと思い至った。
素材となる植物や動物には、その見た目からどのような属性魔力を秘めているか分かるものがある。リッカがこの森で初めて採取した真っ赤な花弁を持つヒヤシンは、火属性魔力が宿っていると一目でわかる。しかし、中には複数の属性魔力を宿しているために、見た目だけでは判断出来ない物もある。そんなときに、属性を判定する魔道具があると便利だと思って作ったのが、この属性判定用の魔道具だ。
中央のカプセルに素材の欠片を入れると、素材の魔力に反応して、カプセルの周りにある各属性魔力を宿した水晶が光を放つ。火属性ならば赤、水属性なら青、雷属性なら黄色、風属性なら緑、土属性なら茶色といった具合だ。
魔力の属性はこれら五大属性と、光と闇の二極属性に大別される。二極属性を宿す物はかなり稀であり、二極を宿した素材を手に入れることはとても難しい。そのため、リッカが作成した属性判定用の魔道具は、五大属性の判定に絞ったものだった。
リッカは、自分が作った魔道具をフェンに見せて説明する。リッカの説明を黙って聞いていたフェンは、興味津々といった様子で手の中にある魔道具を見つめていた。
「これで僕の属性魔力を判定すると言うことですか?」
フェンの言葉に、リッカは頷く。
「フェンの毛を数本もらえる? 毛自体に魔力が宿っていれば、その毛をこの魔道具に入れるだけで属性判定できるはずよ」
リッカの指示を聞き、フェンは迷うことなく自分の尻尾から毛を引き抜いた。それをリッカはすぐに魔道具の中央に収める。
すると、カプセルの中のフェンの毛が微かな光を放った。それを見て、リッカは思わず小さくガッツポーズをする。どうやら、上手くいったようだ。これでフェンの属性魔力が分かる。リッカは興奮気味に魔道具を見つめた。
カプセルの周りにある水晶が、それぞれほんのりと色を点す。赤、青、黄、緑、そして茶。それぞれの水晶が放つ色は弱かったが、それでも、確かに五つの水晶全てが煌めいている。