新人魔女の魔道具製作(4)
だが、結局フェンは何一つ魔法を使うことが出来なかった。フェンは申し訳なさそうな顔をしながら言った。
「申し訳ありません。リッカ様。僕、全然役に立てなくて……。さっきは出来たのにどうして……」
しょんぼりとした様子で項垂れるフェンの背中をリッカは優しく撫でる。
「さっきのテストで力を使いすぎたのかもしれないね。今日は無理せず、また次の機会に検証しましょう」
リッカはフェンの体を気遣い、今日のところはこれくらいにしておこうと思った。しかし、フェンは頑なにそれを拒んだ。
「僕は、もっと自分に出来ることを知りたいです」
フェンのやる気を尊重し、リッカはもう少しだけ彼に付き合うことにした。しかし、それからいくら頑張っても、フェンは何も出すことが出来なかった。フェンは悔しそうに項垂れている。
そんなフェンを見ながら、リッカはフェンが自分の能力を制御出来ていないのではないだろうかと思った。自分も力を使い始めた頃は、魔力が安定しなくて困ったものだった。リッカの知る限り、フェンが魔法を使ったのは今日が初めてなのだ。もしかしたら、使い魔でも同じなのかもしれない。
リッカとしては、自分の使い魔であるフェンの能力について少しでも知っておきたいと思ったが、力を把握するよりも今はまだ、力を安定して使えるように訓練をするべきなのかもしれない。
そう考えたリッカは、鞄からフェンの好物であるクッキーを取り出した。
「フェン。少し休憩しましょう」
リッカがそう言ってフェンの前にクッキーを差し出すと、彼は嬉しそうに尻尾を振った。二人で並んで地面に座り、黙々とお菓子を食べる。フェンはいつもよりもゆっくり食べていた。やはり、少し無理をさせてしまったのかもしれない。
リッカはフェンの様子を横目で見ながら、これからどうしたものかと考える。
フェンが使える力の属性は、今のところ火と水は間違いない。その力が自在に使えるようになれば、攻撃手段が増えるので、今後何かあった時にとても心強い。
しかし、今はまだ力の制御がうまくいかないようなので、不発や暴発を防ぐためにも補助具のようなものがあるといいかもしれない。
ふと、リッカは自分の左手の薬指にはめられている指輪を見つめた。この指輪は、かつてリッカが魔力制御が必要だった頃に両親が贈ってくれたものだ。今はもう自身で魔力の制御はできるのだが、身につけていると安心するので、今でもこうして外さずにつけていた。