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新人魔女と火を吐く使い魔(6)

 フェンもエルナのことを気に入ったようで、されるがままになっている。くすぐったいのか、時折身体を捩らせる。その様子がまた愛くるしい。


「フェンは子犬ではなく、子狼なんですよ」

「狼ですか? では、大きくなったら、さぞ凛々しいお姿になるのでしょうね」


 エルナはもう一度フェンの頭を撫でた。そして、ふと思いついたように立ち上がり、厨房の方へと歩いていく。しばらくして戻ってきたエルナの手には小皿があった。中には数枚のクッキーが入っている。


 エルナはフェンの前にそれを置く。フェンはスンスンと匂いを確かめると、勢いよく食べ始めた。


「ありがとうございます。エルナさん。ところで……」


 リッカはフェンの様子を微笑ましそうに見つめていたが、ふと気になったことをエルナに尋ねた。


「さっき、使い魔を見たのはフェンが初めてだと仰っていましたが、グリムさんにお会いしたことはないのですか?」


 リッカの問いに、エルナは少しだけ首を傾げた。


「グリムさんと言うのは、ネージュ様の使い魔のことでよろしいでしょうか? 以前、マリアンヌ様からそのお名前を伺ったことはあるのですけれど、お姿はまだ一度も拝見したことがないのですよ」


 エルナの言葉に、リッカは目を見開いた。まさか、リゼがエルナに使い魔のグリムを会わせていなかったとは思わなかったのだ。


「そうなんですね。実は、わたしも初めのうちは、グリムさんのこと知らなかったんですよ」


 リッカは苦笑いを浮かべながら言った。


 それにしても、どうしてリゼはエルナにグリムを紹介していないのだろうか。リッカは不思議に思った。リゼの性格ならば、当然エルナには紹介済だと思っていたのだが――


 その時、フェンが小さく吠えた。見ると、フェンがエルナの足元にすり寄っているところだった。フェンはクッキーを食べ終えてしまっていた。尻尾を振りながら、期待に満ちた瞳で、エルナの顔を見上げている。フェンはどうやらエルナにおねだりをしているようだ。


 リッカは思わずくすりと笑ってしまった。


「フェン、ダメだよ。こっちへおいで」


 リッカが呼ぶと、フェンは名残惜しそうにしながらも、リッカの元へとトテトテとやってきた。リッカはフェンを抱き上げると思案顔のエルナに向かって、大丈夫です、と伝える。


 フェンがこれほどエルナに懐くとは思わなかった。気を抜いて甘えてばかりいると、フェンは太ってしまうかもしれない。リッカは心の中で少しだけそんな心配をした。

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