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新人魔女と火を吐く使い魔(1)

 新人魔女のリッカは、まだ外が暗いうちに起き出した。ベッドから降りて軽く伸びをする。


(……よし)


 昨日の不調が嘘のように、頭も体もスッキリしていた。魔力異常はなさそうだ。魔力が回復したことを実感すると、自然と笑みがこぼれる。


(今日からまた頑張ろう!)


 決意を新たに、リッカは寝間着を脱ぎ捨てた。


 まだ寝室から出てこない両親を起こさないよう、静かに家を出る。早朝の澄んだ空気の中、深呼吸しながら歩く。朝露に濡れた草花や木々の匂いを感じながら歩いていると、足下で声がした。


「今日は随分とご機嫌ですね」


 視線を落とすと、フェンがリッカの方を見上げながらトテトテと歩いている。リッカは足下の使い魔に微笑みかけた。


「なんだかお仕事に行けるのが嬉しくって!」


 リッカの言葉を聞き、フェンは頷いた。


「なんだかんだとお休みが続いていましたからね」


 リッカはここ最近の出来事を振り返る。魔熊の討伐、王の崩御と御霊送り、そして魔力枯渇に魔力異常。どれもアカデミー生の頃には経験のなかったことばかりだ。


 その全てを通して魔法学校で学ぶよりも多くのことを学んだ気がする。特に、御霊送りは詠唱を唱えて行なった大規模魔術で、思い返すだけで体が熱くなるような感覚に襲われた。


 あれだけの規模の魔術を大賢者の補佐とはいえ行使したのだ。誇らしい気持ちもある。それ以上に、自分は間違いなく成長しているという自信があった。


 もしも街の工房で見習いとして働いていたら、こんな経験は決してできなかっただろう。


 リゼのそばでもっと多くのことを学びたい。そして何より、今は少しでも早く一人前の魔女になりたいと思っている。


 そんなことを考えていると、ふいにフェンが立ち止まった。どうしたのかと思い見下ろすと、フェンは然りに川面を覗き込んでいる。リッカもそれに倣って川面を眺める。昨夜から今朝にかけての雨でいつもよりも川の水が濁っているように見えた。


 そういえば、最近あまり魚を食べていないなぁとぼんやり考えていると、水面が大きく波立った。驚いて身構えると、水面を突き破るようにして大きな影が現れた。


 それは勢いよく水中から飛び出したかと思うと、リッカたちに向かって盛大に水飛沫をかけた。咄嵯に身をかわし、影の正体を確かめる。そこには、数匹の魔魚の群れがいた。


 一匹の全長は五十センチほどの個体だが、それらが集まり水面を揺らしている様は、まるで巨大魚が水中で暴れているようだった。

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