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新人魔女に届いた蜂蜜色の丸薬(8)

 リッカはそこまで書いて、一度筆を止めた。新人魔女のリッカは、まだ社会に出たばかり。こういう時にどのような文章を書くべきなのか、よく分からなかった。仕方がないので、リッカは、なるべく簡潔に書くことにした。


“お薬代については、お仕事へ行った際にお聞かせください”


 書き終えると、自分の書いた手紙を二度読み返し、リッカは大きく深呼吸をした。それほど失礼な文章ではないだろう。


 リッカは、白フクロウの足に手紙をくくりつけた。


「お願いね」


 リッカはそう言い、窓を開ける。白フクロウはバサリと翼を広げ、窓から外へ飛び立った。雨はいつのまにか止んでいるようだった。


 リッカは、遠ざかっていく白フクロウの姿をいつまでも見送っていた。


「あの鳥は、リッカ様の手紙をちゃんとリゼラルブ様に届けるでしょうか? 僕が行った方が良かったのではありませんか?」


 リッカの使い魔であるフェンが心配そうな声でそう言う。リッカは窓を閉めると、その頭を撫で、大丈夫だよ、と言った。


「だって、あの大賢者、ネージュ・マグノリアが使役している子だよ? ちゃんとリゼさんに届けてくれるよ」


 リッカはそう言って微笑んだ。フェンはその言葉を聞いて、ハッと息を飲む。それから、シュンと項垂れた。リッカはそんなフェンの様子を見て首を傾げる。


「どうしたの?」


 尋ねると、フェンは申し訳なさげな表情を浮かべ、小さく呟いた。


「申し訳ありません。リッカ様が尊敬されているリゼラルブ様に……僕はなんて無礼なことを言ってしまったんでしょう」


 リッカはそんなフェンの姿を見て、思わず笑みがこぼれた。ベッドに腰掛けるとフェンを膝の上に抱き上げる。


「気にしない気にしない! 誰も聞いていなかったから、大丈夫」


 リッカはそう言って、フェンの背中を優しく撫でた。フェンはリッカの顔を見上げ、リッカが怒っていないことに安堵したのか、ホッとしたように息を吐き、嬉しそうに目を細めた。


 リッカはフェンを撫でながら、改めて窓の外へ目を向ける。


「でもね、リゼさんは本当にすごい人なんだよ。わたしはいつか、あの人のようなすごい魔法の使い手になりたいって思っているの。リゼさんを追い越すことは無理でも、せめて、国一番の魔女と言われるようになりたい」


 リッカは力強くそう言った。それから、ぐっと伸びをするように腕を伸ばす。そして、フェンを抱いたままベッドから立ち上がる。


「そのためにも、まずは魔力回復薬を作らなくちゃね」

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