新人魔女に届いた蜂蜜色の丸薬(4)
両親に相談するしかないだろうか。
リッカは遠い目をしながら、天井を仰ぎ見る。どのくらいそうしていただろうか。フクロウのホゥという遠慮気味な鳴き声で我に返ったリッカは、傍にいるフクロウへ視線を向けた。
フクロウはずぶ濡れのまま、リッカのことをじっと見つめている。そういえば、フクロウを拭いてやろうと思っていたのだ。すっかり忘れていた。
リッカは立ち上がると、タオルを持ってきてフクロウを優しく拭いてやった。フクロウは気持ちよさそうに目を細めている。その姿が愛らしくて、思わず頭を撫でてしまう。リッカがひとしきりフクロウを可愛がっていると、羨ましそうな声が室内に響いた。
「リッカ様。僕のことも構ってください」
いつの間にか不満げな顔をしたフェンが姿を現していた。リッカはそんなフェンに微笑みかける。
「フェン。おいで」
リッカがその名を呼ぶと、フェンは嬉しそうに飛びついてきた。リッカはそんなフェンを抱きしめると、使い魔の白銀の毛を丁寧に撫でてやる。フェンは幸せそうな顔でされるがままになっている。そんなリッカとフェンの様子を、フクロウは黙って見守っていた。
「フェン。あなたにお願いしたいことがあったのに、どうして呼んでも出てきてくれなかったの?」
いつもならすぐに出てくるのに、今日に限って何故かなかなか姿を現さなかったのには、何か理由があるのだろうと思っていたが、リッカの口調は少し責めるようになってしまった。
フェンはリッカの腕の中で申し訳なさそうに項垂れる。
「申し訳ありません。いつものようにリッカ様の陰に入ったら、出られなくなってしまったのです。リッカ様の声も聞こえなくなってしまいまして……」
「ええっ? そうだったの? でも、どうして?」
リッカは驚いて、腕の中のフェンを見る。フェンはしきりにリッカの匂いを嗅いでいた。
「何故だかは分かりません。でも、陰の中にいる間、リッカ様の魔力も匂いも感じられませんでした。それが先ほど突然リッカ様の魔力を感じられるようになったので、それで慌てて出てきた次第です」
リッカは合点がいった。恐らく、リゼの丸薬を服用したからだ。体が軽くなったと感じたあの時のことをフェンは言っているのだろう。
リッカは改めて自分の体を見回す。体が軽くなったこと以外は特に変化はない。だが、フェンはリッカの魔力から生まれた使い魔だ。主人であるリッカの微量な魔力の変化を感じ取る事ができるのかもしれない。