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新人魔女と怪しい店(8)

 目を覚ましたリッカがぼんやりしていると、部屋の扉が開いた。


 部屋に入って来たのはミーナだった。ミーナはベッドへと近づくと、リッカの顔を覗き込むように身を屈める。それから安心したような笑みを浮かべた。


「気分はどお?」


 その声に反応したように、リッカは慌てて起き上がろうとする。それをミーナは制すると、優しく微笑んだ。


「もう少し寝てなさい」


 そう言ってリッカの頭を撫でる。リッカはされるがまま、大人しく横になった。


「ミーナさん……ジャックスさんは?」


 ジャックスは、倒れたリッカをミーナの店まで運んで、その後すぐに仕事に戻ったらしい。それを聞いたリッカは申し訳なさそうに俯く。黙り込んだリッカに、ミーナは優しい声で語りかけた。


「気にしないでいいのよ。困った時はお互い様だもの。それより、魔力回復薬を持っているのよね? まずは薬を飲みましょうか」


 リッカは鞄から小瓶を取り出すと、蓋を開け、ゆっくりと口元に運んだ。口の中に広がる苦さが全身を駆け巡るような気がした。


 薬を飲み干し、しばらくすると体がぽかぽかと温かくなってきた。上昇し始めた体温に身を任せていると、ミーナが遠慮がちに声をかけてきた。


「ねぇ、リッカちゃん。それ、良かったら少し見せてくれないかしら」


 リッカは空の小瓶をミーナに手渡す。受け取ったミーナは小瓶の底をまじまじと見つめた。それから、ふぅと小さく息を吐き出し、小瓶をそっとリッカの手に戻す。リッカは不思議そうに首を傾げた。


 その様子を見て、ミーナは苦笑いを浮かべる。


「ジャックスが心配していたのよ。リッカちゃんが偽の薬を掴まされたんじゃないかって」

「ど、どういうことでしょうか?」


 動揺するリッカとは対照的に、ミーナは落ち着いた口調で説明を始めた。


「あのね、ネージュ様のお薬が市場に出回ることは滅多にないの。だから、ジャックスはあなたが騙されたんじゃないかと思ったみたい」


 リッカは愕然とした。


「だ、騙された?」


 そんなリッカを気の毒そうに見ながら、ミーナが小さく首肯する。


「購入したものが魔力回復薬であることは間違いないけど、瓶の底にネージュ様の刻印がないの。だから……」


 ミーナの言葉にリッカは頭を抱える。


 まさか、助手である自分がネージュの刻印という一番大事な部分を見逃してしまうとは。


 いくら魔力枯渇状態で正常な判断ができなかったとはいえ、自分のあまりの不甲斐無さに、リッカは消えてしまいたい気持ちになった。

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