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新人魔女と怪しい店(2)

 きっぱりとそう言えば、父は呆れた様にまたため息をつく。


 リッカの父はこの国の宰相である。国において、宰相とは王に次ぐ権力を持った役職であり、国王を補佐する役割を持つ。つまり、父は実質的にこの国を動かしている人物なのである。


 そして、その娘であるリッカには幼い頃から様々な教育が施されていた。礼儀作法はもちろんのこと、他国の言葉や歴史、数学など、一般的な貴族の娘よりも多くのことを学んできた。もちろん、魔術に関しても。


 しかしリッカ自身は、家は家であり、自分はあくまで一国民に過ぎないと考えている。だからこそ、父とは衝突することもあるのだけれど、それでもリッカは父が好きだったし尊敬していた。


 そんな父が、リゼに対してあまり良い印象を持っていないのかも知れないと察したリッカは、リゼの立場について言及することを躊躇う。


 それにこの場には父以外の人間もいる。母がリゼの素性をどこまで知っているのか分からないし、使用人に至っては、この国の大賢者が、実は王子であるなど、知る由もないことなのだから。


 父はしばらく考えるように押し黙っていたが、やがて諦めたように小さく首を振った。


「そうだな。そのことについては口に出さない方が賢明だろう。だが、お前はいずれ然るべきところへ嫁ぐ身だ。その時、あの方の助手であると知れると、いろいろと厄介なことになる。そのことは分かっているか?」


 それはリッカ自身もよく分かっていた。リッカの結婚相手は、おそらくどこかの貴族の子息になるだろうと思っている。その相手がどのような人物であるかは分からないが、もしも結婚するのであれば、自分の身辺調査は行われるはずだ。


 そうなると、リゼの助手であることを隠し通せるはずもない。大賢者の助手、しかも王子との繋がりが持てるとなれば、よからぬ事を企む輩が現れないとも限らない。


 しかし、だからと言ってリッカとしては今更工房を辞めるつもりはなかった。今ここでリゼの元を離れてしまったら、自分は一生後悔すると思うからだ。


 リッカはまっすぐに父を見つめて答える。


「はい。承知しております。ですが、わたしは今の仕事を続けたいと思っています」


 父は、今度は先程のように深くため息をつくことはなかった。代わりに、仕方がないといった様子で苦笑を浮かべる。


 そんな二人のやり取りを見ていた母は、どこか楽しげに微笑んでいた。結局、リッカはそれ以上今後について追及されることはなかった。

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