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新人魔女と本当の師匠(6)

 そして、穏やかな口調でリッカに語り掛ける。これまで通り、リゼと呼んでもらいたい。自分はマグノリア魔術工房のただの主なのだからと。


 リゼの頼みに、リッカは一瞬戸惑ったが、小さく首を縦に振った。すると、リゼは嬉しそうに笑った。


 初めて見たかもしれないリゼの笑顔に、リッカは胸が締め付けられるような感覚を覚えた。この人は、今までどれほど辛い思いをしてきたのだろうか。そう思うと、涙が出そうになった。


 リッカはリゼのもとで働き始めて、初めてこの人の力になりたいと本気で思った。リッカは改めて、リゼに向かって言った。


「これからもよろしくお願いします、リゼさん」


 リッカの言葉に、リゼは優しく微笑む。


「こちらこそよろしく頼む」


 こうして、リッカとリゼの絆が少しだけ深まったところで、エルナがリゼに声を掛けた。彼女は申し訳なさそうに口を開く。


「ネージュ様、本当に申し訳ございませんでした。まさかリッカ様がご存じないとは思わなくて……」


 エルナの発言に、リゼは慌てて手を左右に振る。


「先ほども言いましたが、私が話していなかったのがいけないのです。エルナさんは気にしないでください」


 リゼはそう言うと、話題を変えようとリッカに話しかける。



「ところで君は、夜中に何と言って自宅を出てきたのだ?」


 突然リゼにそう訊ねられ、リッカはハッとした。深夜に突然リゼから呼び出され、そのままの勢いで、王の魂の弔いを行なってきた。つまり、リッカは無断で家を飛び出してきたのだ。


 そんなことなどすっかり忘れていたが、こんな時間まで戻らなかったら、きっと家族が心配しているに違いない。そのことに思い至った途端、リッカは血相を変えた。


(まずい。早く帰らないと)


 今頃両親がカンカンになって自分を探している姿が目に浮かぶ。


 リッカの様子を見て、リゼは呆れたようにため息を吐いた。エルナも、困り顔で苦笑いを浮かべている。


 リゼはリッカに訊ねた。


「今すぐに家に帰るか? 」


 リッカはもちろんだと即答した。答えを聞いたリゼはふむ、と考える仕草をする。それから、突拍子もない提案を口にした。


「それでは私も君の家へ一緒に行こう」


 リゼの言葉に、リッカは耳を疑う。彼が何を言っているのか理解できなかった。思わず聞き返す。だが、同じ言葉がもう一度繰り返される。どうやら聞き間違いではないらしい。


 どうしてわざわざ自分の家に来ようとしているのだろうか。困惑するリッカに、リゼはさらに続けた。

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