新人魔女と本当の師匠(3)
(あぁ、この人は本当に可愛らしい人だな)
彼女の笑顔を見て、リッカは自然とそう思った。きっと、彼女に想いを寄せる男性は多いだろう。その証拠に、リッカの隣ではリゼがポゥとした様子で彼女を見つめていた。
リッカは苦笑しながら、コホンと咳払いをしてリゼの注意を引く。リッカの合図にリゼはハッと肩を跳ねさせた。
リッカの視線を受けて、リゼは誤魔化すように小さく咳ばらいをすると、何事もなかったかのように平静を取り繕ってエルナへ話しかける。しかし、その声音はいつもより少し上擦っていた。
「エルナさん、朝早くから食事の準備大変だったでしょう? 全く姉上は、あなたにこんなこと……」
リゼの質問に、エルナはにこやかな笑顔で答える。
「いいえ。私、お料理好きなので、全然大丈夫ですよ」
エルナの答えの後、リゼは何か言いたそうに口をパクパクさせていたが、結局何も言わなかった。
そんなリゼの態度をリッカが不思議そうに見ていると、不意にリゼがこちらを向いた。目が合うと、リゼは気まずそうに目を逸らしてしまう。だが、再びチラっとリッカの顔を見る。
リッカは何だろうと首を傾げた。リゼが何を考えているのか分からなくて戸惑っていると、リゼはしきりに、リッカからエルナへ視線を向けてはまたリッカに戻すという動作を繰り返した。
リゼの不可解な行動にリッカが困惑しているうちに、エルナがリゼの視線に気が付いて不思議そうに首を傾げた。
エルナと目が合った瞬間、リゼは頬を赤らめて俯いてしまう。そこでようやくリッカはリゼが何を言いたいのか理解した。
要するに、リゼはエルナとの会話をリッカに取り持って欲しいのだ。おそらく、彼は自分とエルナとの間に壁を感じたのだろう。
リゼはどちらかというと、人と話すことがあまり得意ではない。そんな彼が、自ら進んで他人とコミュニケーションを図ろうとするのは珍しいことだ。
リッカは内心微笑ましく思いながら、リゼのために一肌脱ぐことにした。
「エルナさん、しばらくの間と言っていましたけど、こちらにはどのくらいの期間、居てくださる予定なんですか?」
リッカの問いに、エルナは頬に手を当てて考え込むような仕草を見せた。
やがて、彼女はふわりと柔らかな笑みを浮かベる。
「そうですねえ、国王様が身罷られたばかりですからはっきりとは言えませんが、少なくとも一週間はこちらに滞在することになると思います」
その答えを聞いて、リッカははてと首を傾げた。