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新人魔女と師匠の静かなる時間(7)

 竜を寄越してまでリッカを呼んだのだ。リゼラルブはそれだけ切羽詰まっているということだろう。そんなリゼラルブの窮地に、自分は足を引っ張ることになるかもしれない。リッカは途端に不安になる。


 だが、グリムはリッカの様子を察してか、明るい声で言った。


「ほな、リゼラルブんとこ行こか」


 リッカはこくりと小さく首肯した。


 工房の奥にある部屋に入ると、そこにはすでにリゼラルブがいた。数日ぶりに見た工房主は相変わらず美しい顔立ちをしていたが、どこか疲れているように見える。


 日毎、色が変わるという髪は、今日は土色に染まっていた。短く刈り上げられたその髪がいつになくリゼラルブを男らしく見せていた。


 リッカはこれまでに見たことのないリゼラルブの姿に驚きを隠しきれずにいた。そんなリッカの視線に気付いたのか、リゼラルブが鬱陶しそうに眉を寄せながら口を開く。


「なんだ。何か言いたいことでもあるのか?」


 いつも通りの尊大な態度に、リッカはホッとすると同時に思わず笑みが零れた。リゼラルブはそんなリッカの様子にさらに不機嫌そうな顔をしたが、リッカは構わずに口を開いた。


「いえ、ただ珍しいなと思いまして。そのお姿」


 リッカの言葉に、リゼラルブはフンと鼻を鳴らしただけだった。そして、徐に用件を切り出した。


「王が崩御された」


 その言葉に、リッカは目を見開いた。


「そ、それはどういうことでしょう?」

「そのままの意味だ」

「まさか……! そんな話、街では……」

「当然だ。まだ国民には伏せられている。急だったため、次期王の即位の準備が整うまでは、公表は控えるよう国の方針が決まったそうだ」


 リゼラルブはそう言って深い溜息をつく。


 伏せられている話を知っているということは、大賢者であるリゼラルブは、国王とも面識があったのだろう。親しい間柄であったかどうかは分からないが、それでも訃報は辛いはずだ。


 しかし、何故その話が自分に伝えられるのか。リッカは不思議に思った。すると、リゼラルブはその疑問を察したように答えた。


「公表を控えるとはいえ、私は王の魂を丁重に弔って差し上げたい。しかし、厄介なことに私は少々魔力を使い過ぎたようでな。一人では、まともに魔法を使うこともできぬ有様なのだ。だから……」


 リッカはようやく理解した。つまり、リゼラルブの補佐を頼まれているのだろう。リッカはしっかりと首肯する。


「分かりました。精一杯お手伝いさせていただきます」

「……助かる」

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