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新人魔女は、のんびり森で暮らせない?!(5)

 セバンたちに指示を出し終えたリッカが作業場から出てきた。


「グリムさん、どうかされました?」


 なかなか作業場へ入ってこないグリムを不思議に思い、わざわざ声をかけに来たようだ。そんな些細な気遣いが心地よい。


 この新人魔女がマグノリア魔術工房へやってきてからは、それまでの静かな工房とは打って変わって、毎日が賑やかで忙しない。日向ぼっこをしているときに話しかけられると少し煩わしいと思ってしまうこともあるが、それでも、グリムはこの新人魔女の存在が決して不快ではない。むしろ、面白いとさえ思っている。


 この新人魔女が成長していく姿をこれからも見守りたい。申し分ない才能を思う存分開花させ、立派な魔女に成長してほしい。主と同じように新人魔女の行く末を楽しみに思いながら、グリムはいつものように気だるげにリッカの元へ歩み寄っていく。


「特訓の付き合いでもしようかと思ってな」

「特訓? フェンのですか?」


 グリムからの申し出にリッカが首を傾げる。影から出てきて足下に控える使い魔を見ると、子狼の使い魔は途端に全力で尻尾を振り始めた。


「僕、グリム様と特訓がしたいです」

「でも、この後、すぐにでもラウルさんのお店へ氷精花を届けに行かないと……」


 フェンの懇願にリッカは困ったように眉を寄せる。


「リゼラルブが、あんたのために茶を入れとるで」


 グリムの突然の発言にリッカは目をぱちくりと瞬かせる。


「リゼさんが? わたしのために?」

「せや。珍しいこともあるもんやな」


 意味ありげにそう告げる師の使い魔の顔をしばらくの間じっと見つめていたリッカは、やがてニコリと微笑んだ。


「そうですか。では、グリムさん。フェンの相手をお願いできますか? その間にわたしは街での用事を終わらせてきます。作業も残っていますので、すぐに戻って来ますから」


 グリムの意図を汲み取ったのか、新人魔女はそう言うと一人作業場へと戻って行く。その後ろ姿はどこか浮かれて見える。グリムはそんな彼女の姿に思わず笑みを零した。


「がんばりや」


 使い魔の激励は小さすぎて新人魔女には届かない。しかし、それでいい。それで構わないのだ。彼女は他者に激励などされなくとも、常に全力なのだから。


 作業場からリッカの鼻唄が聞こえてきた。グリムは思わず吹き出してしまう。たかがお茶で、鼻歌が出るほどに気持ちを切り替えられるとは、やはりこの新人魔女は只物ではない。大賢者の使い魔は、そんなことを思うのであった。


~Fin.~

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