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新人魔女は、のんびり森で暮らせない?!(4)

「まったく、あの馬鹿弟子め……意味が分からん」


 頭を抱えるリゼに使い魔のグリムがニヤリと笑みを見せる。


「だから言ったやないか。あないに冷たくせんでもええやろって。煽りすぎや。まぁ、でも結果オーライなんとちゃうか? あの子に発破かけたかっただけなんやろ?」


 グリムにそう問われたリゼは、「まぁな」と短く返す。そして少し気まずそうに、弟子が出ていった工房の扉を見つめた。


「……これからも弟子でいたいだと? ……まったく。私はここをやめろとは言っていないだろうに」


 リゼはそう言って大きく溜息をつく。そんな主人の様子に使い魔はケラケラと愉快そうな笑い声をあげた。


「まぁ、今回はお前さんが悪いんとちゃうか? あの子の向上心に付け込むようなことして。あの子に何も言うてなかったんやろ? そのくせ何のフォローもせんし。まだ子供や。突然とんでもないプレッシャーに晒されたんやで。ああして爆発したかておかしないって」


 リゼは溜息をつき、ゆっくりと首を横に振る。


 大賢者唯一の弱点。それは、人の気持ちに疎い事。


 とりあえず、二人分のお茶でも入れてみるか。そんなことすら、これまで誰かのためになどしたことはなかったかもしれない。リゼは、自分でもよく分からないムズムズとした感情に苦笑しながら食堂へと向かった。


 慣れないお茶の準備にこれから悪戦苦闘するであろう主より一足先に、グリムはリッカの作業場へ向かう。庭先から作業場を覗けば、リッカは忙しそうにセバンたちに指示を出していた。その顔は真剣そのもので、もう憂いは感じられない。そんな新人魔女の姿にグリムは満足そうにほくそ笑む。


「のんびり暮らしたいか。それやったら、大人しく街で働いとったら良かったのに。まったく。真っ直ぐ過ぎる性分やから難義やなぁ」


 グリムがそんなことを呟きながら新人魔女の動向を観察していると、リッカの影から子狼の使い魔がひょっこり顔を出した。どうやらグリムの魔力を感じ取って顔を覗かせたようだ。何事かを主人に伝えている。


 あの子狼はいつの間にか魔力感知も出来るようになったのか。グリムはフェンの著しい成長ぶりを密かに誇らしく感じていた。主人の魔力から生まれてくる使い魔は、既にその在るべき姿が決まっている。成長などしない。グリムはそう思っていた。しかし、そうではないのかもしれない。まだまだ自身にも伸び代があるのかもしれない。あの子狼を見ているとそんな微かな希望に胸が高鳴る。

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