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新人魔女に重く圧し掛かるもの(5)

 その様子を見ていた周りの貴族子女たちからは、当人よりも大きな歓声が上がる。


 まだまだ恋愛の機微に疎いリッカにとっては、その光景の何が良いのかさっぱりわからなかったが、リゼがエルナのために用意した乙女心を擽る演出は、夜会に参加した多くの女性の心までもガッチリと掴んだようだった。


「まぁ、素敵ですわね。(わたくし)、これよりも少し小さめの魔道具でしたら、町の雑貨店で見かけたことがございますが、このように思い出を投影出来るものもございますのね」


 エルナのその発言を聞いた貴族子女たちのいくつかの固まりが、すぐさま「どこの店のことだ」と情報交換を始める。


 そんな状況をリッカが遠巻きに見ていると、不意にエルナと目が合った。その瞬間、エルナはイタズラが成功した時のような楽しげな笑みを浮かべた。その笑みの理由が分からずリッカがキョトンとしていると、情報交換をしていた貴族子女の一団がわっと盛り上がる。


「街の雑貨店と言えば、あそこのことじゃないかしら? ほら、近くに最近流行りのスイーツ店がある……」

「あぁ。あそこの。私、是非あの魔道具を間近で見てみたいわ。本当は、あれを送って下さる殿方がいると良いのですけれど、今はまだそのような素敵なお相手はおりませんし……」

「まぁ。でしたら、私とご一緒しませんこと? もしよろしければ、スイーツ店でお茶もご一緒に。最近あの店に可愛らしい給仕係がいることはご存じ? スイーツも美味しいですし、なにより彼らが可愛らしくて、私、ここ最近はあのお店によく足を運んでいるのですわ」

「あら、それはいいですわね。是非ご一緒させてくださいませ」


 貴族子女たちはそう言ってクスクスと笑い合いながら、話は次第に別の話題へと移行していく。その様子にリッカはようやくエルナの意図に気が付いた。エルナは以前この魔道具に関しては完成してからも協力できることがあると言っていた。それは、こうして魔道具をさりげなく周囲に売り込むことだったのだ。


 「なるほど」と心の内で感心しながらエルナを見れば、彼女は相変わらず楽し気な笑みを浮かべていた。


「……なるほどな〜。それでこの売れ行きかぁ」


 夜会での出来事をリッカが口にすると、ジャックスとミーナが感心したように頷く。


「もううちの店はリッカちゃんとエルナ様で持っているようなものだわ」


 そう言ってミーナが悪戯っぽく笑った。リッカは慌てて首を横に振る。


「そ、そんな。それは言い過ぎですよ!」

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