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新人魔女に重く圧し掛かるもの(1)

「あっ! ジュヴェントゥス様だ!」

「ジュヴェントゥス様、こんにちは〜」

「まぁまぁ。ジュヴェントゥス様、お遣いですか?」


 街を歩いていると次々と声を掛けられる。そんな声を無視するわけにもいかず、リッカはその度に顔を引き攣らせながらもなんとか反応を返す。


 王都の街を行き交う人々の反応は、予想していたよりも好意的だった。思いの外あっさりと人々に受け入れられている事にリッカは安堵しつつも、しかし、それでもやはり自身が「次代を担う賢者(ジュヴェントゥス)」と呼ばれることに、まだ違和感を拭えないでいる。


 リッカが「次代を担う賢者(ジュヴェントゥス)」などと言う大層な肩書きで呼ばれるようになったのは、もちろんあの夜会で行われたリゼの大演説のせいである。リゼの演説は、会場にいた貴族たちの度肝を抜くと同時に、多くの者を魅了し、誰もが異論を唱えられない状況を作り出してしまった。そして、国王の鶴の一声でリゼの言葉は正式に決定事項となり、あれよあれよという間にリッカは「次代を担う賢者(ジュヴェントゥス)」なる肩書を背負わされることになったのである。


 大衆の面前で王族に意を唱えることなど、新人魔女に出来るはずもない。リッカになす術はなく、黙ってその立場を受け入れることしかできなかったのだが、やはりどうしても解せない部分がある。


 リッカはただの新人魔女だ。魔法の研究も実習も興味があるし好きなので積極的に取り組んでいるが、それはあくまでもリッカの個人的な思惑に過ぎない。リゼが大演説の中で主張していたような高尚な理念などリッカは微塵も持ち合わせていない。確かに、立派な魔女にそしてなれるものならば師であるリゼのような賢者になりたいとリッカは思っている。だが、だからと言って「次代を担う賢者」を名乗れるほどの何かを成しているかと言えば、決してそんなことはない。自身はまだまだ未熟であり、学ぶべきことは沢山ある。そんな自分が「次代を担う賢者(ジュヴェントゥス)」と持ち上げられても、素直に喜ぶことなどできるはずもなかった。


 しかし、そんなリッカの思いなどまるでお構いなしに、あっという間にリッカは「次代を担う賢者」に仕立て上げられてしまったのだった。今にして思えば、リゼは夜会が開かれている間にそのような話題を持ち出すつもりでいたのだろう。夜会の場は様々な思惑が入り乱れ、人の感情を高ぶらせるのにうってつけの場であるのだから。あの隣国の使者はきっとリゼの思惑によって、まんまと当て馬として利用されたのだろう。

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