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新人魔女と師匠の静かなる時間(4)

 かっちりとした鱗と骨ばった翼という見た目からは考えられないほどに優しく受け止められたリッカは、思わずポフポフと翼を叩きながら感嘆の声を上げた。


 その様子に、グリムが苦笑しながら声をかけてきた。


「おーい、行くで」


 グリムの言葉を聞いて、リッカは自分の行動に気づきハッとする。


「すっ、すみません!」


 謝罪を口にした後で、リッカは慌てて竜の体をよじ登ろうと立ち上がる。そんなリッカの様子に、グリムはおかしさを隠しきれず笑いを漏らす。


 だが、いつまでも遊んでいるわけにはいかないと、すぐに気持ちを切り替えると、竜の背中をポンと叩いた。


 次の瞬間――。


 リッカの視界がぐらりと揺れる。竜が翼をぐっと持ち上げ、リッカをグリムのそばまで運んだのだ。


 突然のことに驚きながらも、リッカは何とかバランスを保ち、グリムの隣に着地する。リッカが無事に着地したことを確認すると、グリムは竜の首を軽く叩きながら言った。


「ほなら、行くで」


 すると、その言葉を合図にしたかのように、竜はゆっくりと羽ばたき始める。


 ふわりと体が浮く感覚にリッカが驚いているうちに、竜は徐々に加速していき、あっという間に地面が見えなくなった。


 リッカは、竜の背にしがみつきながら下を見る。そこには広大な森が広がっていた。夜の闇に包まれているはずなのに、木々は青白く輝いている。その幻想的な光景に、リッカは思わず息を飲む。


 そして同時に、自分が今どれだけ高いところにいるのかということに気付き、ぶるりと身を震わせた。そんなリッカの様子を横目で見ていたグリムは、呆れたような声音で言う。だが、その表情はどこか楽しげだ。


「そないに怖がらなくても、落ちたりしぃひん」

「そ、そうですよね。あはは……」

「竜に乗ったんは初めてか?」

「はい。こんなにすごいとは思いませんでした……」


 リッカの返事を聞き、グリムは満足げにうなずく。


「せやろ。わいも初めて乗った時はビビッたもんやで。なんせ、こいつら、わいの数百倍はデカいやろ」


 グリムの言葉でリッカは改めて竜を見る。竜の全長は十メートルを超えるだろうか。とても大きい。全身を覆う鱗は鈍い銀色に輝いており、背中にある羽は透き通るような白色だ。首筋の辺りには、鮮やかな青色の宝石のような飾りが付いている。その美しさに見惚れていたリッカは、ふと疑問を感じて口を開く。


「あの、この子の名前ってあるんですか?」


 その問いに、グリムはきょとんとした顔をする。

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