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新人魔女を包む家族の愛(4)

 エルナの答えにリッカは首を傾げる。しかし、エルナは微笑むばかりでその疑問を解消してはくれないようだ。


「さぁ、そろそろ朝食のお時間ですね。参りましょう」


 リッカは、結局エルナが何を言いたかったのか分からずじまいになってしまった。しかし、エルナのことだ。突拍子もないことをして周囲に迷惑をかけるなんてことはしないはず。リッカはエルナに促されて席を立ちながら、そう結論付けるのだった。


 食堂では父のイドラが一人朝食を摂っていた。母ロレーヌはまだ寝ているようだ。イドラはリッカたちに気づくとチラリと視線を向けたが、すぐに食事へと視線を戻した。


 リッカとエルナは父に挨拶をした後、席についた。食事が運ばれてくる間二人が静かに待っていると、手早く食事を終えたイドラがリッカへ声をかけた。


「リッカ、お前は今日も仕事か?」


 リッカは父の質問の意図が読めず、首を傾げたまま答えた。


「いえ、今日はお休みしようかと」

「休みなのにこのように朝早く起きるとは、何か用事でもあるのか?」


 リッカは父イドラの真意を測りかねて困ったように眉を下げた。流石に徹夜の件はいい顔をされないだろう。しかしだからといって、嘘をつくのも憚られる。リッカはどうしたものかと口籠った。


「いえ、その……用事があるわけではないのですが」


 そんな様子のリッカにエルナが助け舟を出す。


「お義父様。本日のリッカさんは少々お顔の色が良くありません。ですから、本日はお休みしてはどうかと、私が先ほどお声をかけたのですよ」


 エルナの答えにリッカは思わず目を大きく見開いたが、すぐにその意図を察して頷いた。確かに寝不足なので見ようによっては顔色が悪く見えるだろう。


 イドラはエルナの言葉に「ふむ」と頷き、リッカの顔をじっと見る。リッカはそんな父の真っ直ぐな視線に居心地の悪さを感じて、思わず目を伏せた。その様子が思いがけず体調悪く映ったようだ。イドラはリッカの様子を見て小さくため息を吐くと口を開いた。


「仕事が楽しいのかもしれんが、無理はしないように」


 思いがけない父の気遣いに、リッカは俯いたまま素直に頷いた。イドラの厳格な顔には娘を案ずる色が見え隠れする。しかし、彼の眉間に深く刻まれた皺がそれを伝わりずらくしていた。


 親子の会話を傍らで見ていたエルナは、義父の不器用な優しさにもどかしさを感じたが、イドラの気持ちを自身が代弁するのも違う気がして、ただ静かに見守るに留めるのだった。

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