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新人魔女を包む家族の愛(3)

 リッカはエルナに素直に頷いた。


「魔道具の試作品はこれからですか?」


 水晶人形を返しながら問うエルナにリッカは一瞬首を傾げたが、直ぐに「あぁ」と思い至った。


「いえ。試作品は完成しています。こちらはお姉様の依代となる水晶です」


 リッカは答えながら再度水晶人形をエルナの手に握らせた。


「この魔道具を是非お姉様に送りたいと、リゼさんから制作依頼を受けていたのです」

「まぁ、ネージュ様から?」

「はい。お姉様が完成を楽しみにされているのであれば一番に送りたいと」


 リッカの説明に、エルナは嬉しそうに頷いた。


「そうでしたの。完成した暁には、是非一つ購入しようと思っておりましたが。そうですか、ネージュ様が」


 エルナは、水晶人形をそっと胸に抱いた。エルナの頬はほんのりと赤みを帯びている。そんなエルナの様子にリッカも思わず微笑んだ。


「それにしても、どうしてお姉様はこちらの魔道具が欲しかったのですか?」

「え? それは……」


 リッカの問いにエルナは一瞬口籠った。しかし、すぐに観念したかのように口を開いた。


「リッカさんと以前こちらの魔道具についてあれこれとお話をしていたでしょう? (わたくし)には魔道具を作成する才能などありませんから、それはとても貴重な経験でした。ほんの一部とはいえ、私の考えが組み込まれた魔道具です。私にも出来ることがある。そんな証が形として欲しかったのかもしれません」


 エルナの答えにリッカは目を大きく見開いた。可愛らしいからという理由でもなく、珍しいからという理由でもなく、エルナは純粋に自分の行いを形として残したいと思っていたらしい。


「お姉様……」


 リッカはエルナの返答に胸を打たれた。それと同時に、ふとある疑問が思い浮かんだ。


「あれ、じゃあ、別にこの魔道具でなくても……。あ、いえ、なんでもありません」


 リッカは思わず口を滑らせそうになったが、慌てて言葉を濁す。そんなリッカにエルナはクスクスと笑い出した。


「ふふ、リッカさんったら」


 エルナはおかしそうに笑う。どうやらリッカが何を言いかけたのか察したらしい。


「そういう意味では、この魔道具でなくても良かったのかもしれません。でも、私はこれが欲しいと思ったのです。だって、思い出が投影出来る魔道具なんて、とても素敵ですもの」


 エルナはそう言って微笑む。それから、少しいたずらっぽく目を細めて続けた。


「それに今回の魔道具の場合、完成した後にも私がお力になれることがあるのです」

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