新人魔女の使い魔と師匠の使い魔(6)
「それで? 君はどのように検証するつもりだ?」
リゼはどこか上機嫌に問う。自身以上に使い魔の検証に意欲的な様子の師匠にリッカは胸の内でクスリと笑う。やはり、リッカとリゼは似た者師弟である。
「そうですね。まず、グリムさんとフェンの違いから考えます」
「ふむ」
「フェンは五大属性の魔法が使えますが、同じ使い魔であるはずのグリムさんは魔法が使えないと聞きました」
「そうだ。グリムは一切の魔法を使えない。あれに出来ることは、私と魔力を共有し、私と繋がることのみだ」
「グリムさんが以前、使役獣に魔力を分け与えているのを見たことがあります。確かその時、リゼさんの魔力を分け与えていると仰っていました」
リゼは頷く。リッカは話を続けた。
「つまり、グリムさんはリゼさんの魔力を使えると言うことですよね。わたしはこれまでフェンと魔力を共有しているという意識がなかったのですが、本来、使い魔との繋がりとはそういうものなのですか?」
「ああ、そうだ。そもそも使い魔は主の魔力でできているのだ。だから、我々が意識せずとも、常に使い魔には魔力が供給されている」
リッカは以前フェンが口にしていた言葉を思い出す。フェン曰く、リッカの魔力はクッキーのような匂いがするのだと。別の魔力が混じった時には苦いとも表現していた。フェンの口ぶりからするに、使い魔は主の魔力を食していると言うことなのだろうか。リッカは思案に耽りつつも、リゼに問う。
「ちなみに、リゼさんの魔力はどのような味がするのですか?」
「はぁ? 味だと?」
突飛な質問にリゼは素っ頓狂な声を上げた。リゼのそんな反応にリッカは首を傾げる。
「はい。フェンが言うには、わたしの魔力はクッキーのような匂いがして甘いそうなのです。別の魔力を感じた時には苦いとも言っていました。つまり、魔力には個々に味があるのだと思うのです。グリムさんから聞いたことはないですか?」
リゼはリッカの言葉を聞き、「なるほど」と意味ありげに声を発した。
「使い魔は主に似るという。それはそうだろう。生みだした者の魔力でできているのだから。いわば自身の一部だ」
「ええ。そのように言えると思いますが、だから、なんだと言うのですか?」
「つまり、君の使い魔は、君同様に相当に食い意地が張っていると言うことだ」
「なっ……」
思いもよらぬ言葉にリッカは思わず言葉を詰まらせる。それからジトリと師匠を睨みつけた。だがリゼは素知らぬ顔をする。