新人魔女の使い魔と師匠の使い魔(5)
「そうだな。その違いが何故なのか君は気にならないのか?」
「え、うーん。それは……気になっていますけど……」
「ならば、何故即時に検証をしようとしないのだ?」
「……で、ですから、先程も言ったように、忘れていたんですよ。……色々とやることがありましたから」
リッカは気まずさを誤魔化すように頭をポリポリと掻く。
「まぁいい。それで? 君はこれを機に、使い魔たちの違いを検証するつもりはないのか?」
「え? 今ですか?」
リッカが驚いたように声を上げると、リゼはニヤリと笑う。その笑顔を見て、リッカはため息とともに肩を落とした。
「もしかして、リゼさんも答えを知らないんじゃないですか? それで気になったから、今、わたしに調べろと言っていたりしません?」
リッカの嫌そうな反応に、リゼはさも心外だと言わんばかりに肩を竦める。
「私は大凡の検討はついている。君が自身で考えることを放棄し、他人の知識で満足すると言うのなら、今ここで私の考えを述べても良いのだが?」
リゼの脅しめいた言い方にリッカは思わず「うぅ」っと唸り声をあげる。師匠の棘のある物言いには腹が立つが、言っていることは正しい。研究と実習の好きなリッカは、試行錯誤しながらも出来ることなら自身で答えを導きだしたいと思っている。それは、リッカが答えを知るよりも過程に楽しみを見出しているからである。リゼはそんな弟子の性分を理解しているのだろう。
リッカは観念したようにため息をついた。
「分かりました。やりますよ! やればいいんでしょう? もう。……さっきは夜遅いことを心配してくれていたのに」
ぶつぶつと文句を言う弟子を、リゼは愉しげに眺める。
「嫌ならやらなければいいだろう。私は無理強いなどしていないはずだ」
「ええ、ええ。そうですね。わたしが自発的に検証するんです。リゼさんは偶然それにお付き合いくださると言うことですよね」
「あはは。そうだ。私は君の検証中に偶然居合わせ、君の考えに興味があるだけだ。決して強要しているわけではない」
「本当に口の減らない人ですね!」
リゼの言葉にリッカは悪態を吐く。だが、言葉とは裏腹にその顔はいつの間にか笑顔になっていた。リッカはいつもリゼにいいように丸め込まれてしまう。しかし結局のところ、面倒ごとであってもそれらは全てリッカの知識の糧になる。それを分かっているからこそ、リッカは与えられた課題に全力で臨む。リゼはそんな弟子を満足そうに眺めた。