新人魔女の使い魔と師匠の使い魔(4)
その意味ありげな視線に当然リッカは困惑の色を見せた。
「適任? 一体どう言う意味ですか?」
「いや。今はまだ言えぬ。だがすぐに分かる」
「はぁ。そうですか。でもあまり無理難題を押し付けないでくださいよ?」
「ああ、大丈夫だ。これまでと大して変わらぬさ」
リゼの言動が腑に落ちずリッカは首をひねるが、考えても答えが出るはずもない。リゼはそんなリッカの仕草を見てニヤニヤと笑うばかりだった。
「悪い予感しかしません」
リゼの明らかに含みのある笑みを見ながら、リッカはポツリとこぼす。
「まぁ、それほど気負うことはない。それより」
リゼは話題を逸らすように、リッカの手の中にある水晶人形へ目を向けた。
「それの協力をグリムがしていると言っていたな」
「そうです。すみません。勝手に。ダメでしたか?」
「いや、それは別にいい。ただ、どうして使い魔なのかと思ってな。もしや、気が付いたか?」
「え? 何にですか?」
リッカが不思議そうに問い返すとリゼは少しだけ驚いたような表情を浮かべた。
「なんだ。気が付いていないのか」
「だから何をです? はっきり言ってください」
リゼのもったいぶった言い方に、リッカはだんだんと苛立ち始める。そんなリッカを見て、リゼは呆れたように小さくため息をついた。
「全く……。君の観察眼はどうなっているのだ? なかなかに鋭いかと思えば、肝心なところでは鈍感だな。君と言う人間は本当に理解し難い」
「またそれですか?」
リゼの呆れ混じりの言葉に、リッカが頬を膨らませる。そんな様子にリゼはまた一つため息をついた。
「以前君は、グリムと君の使い魔の違いを気にしていたように思うが? 今回の検証はその一環ではないのか?」
「……え?」
リゼの思いがけない問いにリッカは思わず言葉を失う。そしてようやくリゼの言わんとしていることが理解出来たのだろう。見る間にリッカの顔に赤みが差した。
「そう言えば、そうでしたね。すっかり忘れていました。グリムさんとフェンの違いはそれぞれの個性かと……」
リッカは恥ずかしそうに、もごもごと言い訳を口にする。そんなリッカにリゼは追い討ちをかけた。
「個性と言えば個性なのだろう。それで? 君はグリムと君の使い魔の違いが何か、明確に分かっているのか?」
「え? それは……」
リッカはしどろもどろになりながら視線を泳がせる。
「えっとですね……。グリムさんは魔法が使えないけど、同じ使い魔でもフェンは水魔法などの魔法が使えます」