新人魔女の使い魔と師匠の使い魔(3)
遊具を動かしたり、本来の作業をしていたり、畑の土を均したり。思い思いに活動するセバンたちをリゼはしばらく眺めていたが、やがて何かに納得したように頷いた。
「どうかしましたか?」
「いや。やはり君は興味深いと思ってな」
「え? わたしですか?」
リッカはリゼの言わんとしていることが分からず首を傾げた。そのリッカの様子を見たリゼがおかしそうにフッと笑みをもらす。
「ああ。いつ見てもセバンたちは珍妙だし、それを生みだした君の思考回路の奇抜さと発想力は、普通では理解し難い」
「それって、わたしが変人だって言いたいんですか?」
「いや、変人まではいかないだろうが一般的ではなかろうな」
リゼのあんまりな言いぐさにリッカはがくりと項垂れる。
「変人って……。わたしは普通ですよ」
リッカの様子を見て、リゼが面白そうに声を立てて笑う。
「ああ、すまんな。別に君を悪く言いたいのではない。むしろ、私は好ましく思っているぞ?」
「ちっとも嬉しくないです」
憮然とするリッカに、リゼは少しだけ困った顔をする。
「まぁ、そう拗ねるな。褒め言葉と受け取っておけ」
「それはどうもありがとうございます……全然褒められている気がしませんけど……」
リッカは不満げな表情のままだが、リゼは気にする素振りも見せずに言葉を続けた。
「ともかくだ。これだ。これにする」
リゼは選んだ水晶人形をグイっとリッカに差し出した。
「分かりました。では、これをもとにリゼさんの水晶を加工しますね。完成したらリゼさんとお姉様にお渡ししますので、一週間ほど肌身離さず持っていてください」
リッカは水晶人形を受け取りながらリゼに確認する。
「肌身離さずか……邪魔だな」
「もう、グリムさんみたいなこと言わないでくださいよ。リゼさんがお姉様に魔道具を送ると言ったんですからね」
リッカが呆れ混じりに言うと、リゼは不思議そうに眉根を寄せた。
「グリムがなんだって?」
「え? ああ、試作品の協力をグリムさんとフェンにお願いしているのです。使い魔であっても、魔道具の所有者になり得るのかを検証しようと思いまして」
「それで?」
「今、グリムさんとフェンには水晶を肌身離さず身につけてもらっているんですけど、グリムさんが格好悪いと仰って」
「なるほどな」
リゼはどこか愉快そうに笑う。そんなリゼをリッカは不思議そうに見つめた。
「何か?」
「いや、やはり君が適任だと思ってな」
リゼは意味深な言葉を口にして笑みを浮かべる。