新人魔女の使い魔と師匠の使い魔(1)
テントの片づけや畑の雪かきをセバンに任せ、リッカは一気に襲ってきた疲労感を癒すようにエルナの持たせてくれた薬草茶を飲みながら一息ついていた。ポットに入れられた薬草茶は温かさを保っており、冷えた体を内側から温めてくれる。
リッカは薬草茶をもたせてくれたエルナに感謝しながら、先ほどまでの緊張感をふり返る。バタバタとしていて段取りも何もあったものではなかったが、とりあえずは、目標としていた氷精花の栽培に成功した。これで、今後のラウルからの受注にも対応出来る。
「とりあえずの課題はクリア出来たからいいけど、毎度、この緊張感を味わうのは……。改善の余地ありね」
リッカは忘れないうちに改善点を洗い出しておこうと、頬をペチペチと軽く叩き気合を入れ直す。それから、思いつく改善点を書き留めていった。作業場内にカリカリとペンの走る音が響く。
「魔力供給はセバンには出来ないしなぁ……。せめて、タイミングが分かれば……うーん」
リッカが腕組みをして唸るように考えていると、作業場の扉をガチャリと開けリゼが顔を覗かせた。
「なんだ、まだ居たのか。もう夜中だぞ」
リゼは呆れたようにリッカの姿を見て言った。どうやら作業場の明かりが点いていたために様子を見に来てくれたようだ。
「あ、リゼさん! リゼさんこそどうしたんですか? こんな時間に。王宮を抜け出してきたんですか?」
「必要な薬剤を取りに来ただけだ。すぐに戻る」
遠慮も何もなく声を上げるリッカに、リゼはふんと鼻を鳴らす。
「王宮でも研究をしているんですか? ゆっくり休まないとダメですよ」
「問題ない。自分の限界くらい把握している。それよりも、君こそいい加減休め。一体こんな時間まで何をやっているのだ? まさか、例の魔道具をこんな時間まで作っていたのではあるまいな? 確かに急いでは欲しいが、何も夜中まで……」
リッカの心配を余所に、リゼは素知らぬ顔で質問を返す。それに対して、リッカはあっと思い出したように声を上げた。
「そうでした、リゼさん!」
「なんだ?」
「氷精花の栽培に成功したんです!」
「なにっ! それは、本当か!?」
リッカの言葉にさすがのリゼも驚いた様子を見せる。とても信じられないと言いたげに氷精花の畑へ視線を向けたが、畑はセバンたちによって綺麗に雪かきされ、今は茶色い土を剥き出しにしている。
「いつの間に!? いや、まさか、こんなに早くに成功させるとは……」
リゼは悔しそうに顔を歪めた。