新人魔女の忙しい一日(4)
「リッカ様、何かお困りですか? 僕でよければお手伝いしますよ?」
「フェン! そうか。使い魔でもできるのかしら?」
リッカが自問する様に呟くと、フェンは嬉しそうに尻尾を揺らした。
「僕なんでもやりますよ! 最近はあいつらばかりがリッカ様のお役に立っていて、僕、少し羨ましかったんです。なので、ぜひお役に立ちたいです!」
フェンは不満そうにチラリとセバンたちを見た後に、期待の眼差しをリッカへと向ける。リッカは思わず苦笑してそんなフェンの頭を優しく撫でた。
「ありがとう。じゃあ早速お願いしようかしら」
「はいっ! お任せください」
リッカの言葉にフェンの尻尾がぶんぶん揺れる。
「それじゃあ、フェンにはしばらくの間、この水晶の人形を身につけていて欲しいの」
「はい!」
リッカの指示にフェンは元気よく返事をする。リッカはそんなフェンの首輪に水晶人形を入れた小さな布の袋を取り付けた。フェンは不思議そうに首を傾げる。
「これは?」
「これから試作する魔道具に使う水晶よ。持ち主を記憶させたいの」
「僕はどうすれば良いのですか?」
「身につけているだけでいいのよ」
「それだけですか? それだけでリッカ様のお役にたてますか?」
フェンは不安そうにリッカに問いかける。その心情を察したリッカは、安心させるように優しく微笑んだ。
「もちろんよ。使い魔であるあなたに、是非お願いしたいの」
「わかりました! あいつらには出来ない僕だけの仕事ですね! お任せください! リッカ様のために僕頑張ります!」
フェンは嬉しそうに尻尾を振り回し、くるくるとその場を駆け回る。
「じゃあフェン。しばらくその水晶をよろしくね。あとは、もう一体の持ち主を誰にするか……。このままわたしを持ち主としてもいいけど、わたしとフェンは魔力を共有しているから、もしかしたら同一と認識されるかもしれないし。やはり完全に別個体と認識された方が良いから……」
リッカはぶつぶつと独り言を呟きながら思考する。しばらくの間思案した後で、何かを思いついたように顔を輝かせた。
「そうだ! グリムさんにお願いしてみましょう」
フェンが不思議そうにリッカを見上げる。そんなフェンを引き連れてリッカはリゼの工房へ向かった。
リゼは皇太子となってからというもの、あまり工房に居ない。だが、グリムはいつでも定位置のソファで居眠りをしているのだ。
「お休みのところ失礼します。グリムさん」
リッカの声にリゼの使い魔が薄目を開ける。