新人魔女の忙しい一日(3)
セバンたちはその絵をじっくりと見ながら首を傾げたり、互いに顔を見合わせたりしている。その反応からは、セバンたちがリッカの指示をしっかりと理解しているのか分からない。
「あなたたちに彫刻が出来るかどうか確認したいのだけどいい?」
リッカがそう問いかけると、セバンたちは大きく頷いた。リゼの水晶をいきなりセバンたちに与えるわけにはいかないので、リッカ自身の持ち物の中から、手ごろな水晶をいくつか取り出す。
「彫刻用の道具はあいにく揃えていないのだけれど、出来る?」
心配そうな様子でリッカが問いかければ、セバンたちは再び大きく頷き、それぞれに好きな水晶を決めると作業を始めた。
リッカは邪魔にならない様に静かにセバンたちの様子を見守る。しばらく見ていると、どうやら彼らの作業方法はそれぞれに違っていることが分かった。手を使って水晶を削るだけでなく、足を使って水晶を砕き大きさを調節したり、水晶の一部を自身の体に取り込んでいるセバンもいる。
(あれは何をしているのかしら)
不思議に思っている間にも、セバンたちはどんどんと水晶を加工して形作っていく。そして、わずか三十分程でオーダー品を作り上げた。それぞれに個性ある形をしているが、どの水晶人形も出来は素晴らしい。リッカの腕ではとてもこうはいかないだろう。
「すごい! 本当にあなたたちは優秀ね!」
リッカが拍手しながら褒め称えると、褒められた嬉しさからなのか、それとも作業が楽しかったからなのか、セバンたちは皆一様に飛び跳ね喜びを露わにした。正直なところリゼのデザイン画を見てもリッカには全くイメージが湧かなかったのでセバンたちに一任したのだが、その出来栄えはリッカの想像を遥かに超えていた。
リゼがこれを見たらどんな反応をするのだろうかと想像すると思わず笑みがこぼれる。
「あなたたちに頼んで良かったわ! じゃあ、本番はまた後日。今度の水晶はもっと大きいから、みんなで協力してね」
リッカの指示にセバンたちはコクリと頷く。本当にいい助手たちを得られたとリッカは心の内で喜んだ。
「さて。あとは、これに精霊を付与するだけ。でも、このままだとどちらの水晶もわたしの記憶媒体になってしまうのかしら?」
リッカはセバンたちが加工してくれた水晶人形を見比べ、唸る。いくら試作の段階とは言え、媒体の持ち主はやはり別々の者が良いだろう。リッカが悩んでいるとリッカの影からひょっこりとフェンが現れた。