新人魔女は、やっぱりすごい!?(4)
リッカはセバンたちに指示を出す。
「みんな、まずはテントを張って」
リッカの指示を聞いたセバンたちは、氷精花の畑の周りに立てられたポールをよじ登り、あっという間に梁までたどり着く。そして、梁を器用に渡り始めた。
「何が始まるのですか?」
エルナは興味津々といった様子でリッカへ問いかける。リッカはセバンたちの動きを注視しながら指をさした。
「あちらの梁に天幕が縛り付けてあるのです。これからそれを降ろして簡易テントを組み立てます」
リッカが説明している間にセバンたちは天幕を降ろし、ポールをスルスルと降りてきた。ポールから飛び降りたセバンたちは、今度はわらわらとブランコやシーソーのある方へ駆けて行くと、それぞれの遊具で遊び始めた。
「まぁ! なんて可愛らしい!」
エルナはその様子を見て思わずといった様子で声を上げる。リッカはそんなエルナの反応にクスクスと笑った。
「では、そろそろ中に入ってみましょう」
リッカは完成した天幕の中へエルナを案内する。
「ここは氷精花を育てるための畑なんです。どうやら花を育てるためには、温度管理と風通しの良さが重要なようで……。ほら、上を見てください」
リッカに促されエルナはテント上部を見る。そこでは数枚の薄い板状のものがふわりふわりと左右に揺れ動いていた。
「あれは?」
「このテント内で風を起こすための団扇です。セバンたちが動かしているんですよ」
「でも、先ほどはブランコに……」
訳が分からないという顔をしてエルナは天幕の外へ出てみる。天幕の外では、やはりセバンがブランコやシーソー遊びに興じていた。エルナは首を捻って天幕の中へ戻る。その様子を面白そうに見ていたリッカはクスクスと笑う。
「ブランコが団扇の動力源なんです。それから、シーソーは作業場内の空気循環の役割を担っています」
エルナは目を丸くさせる。言われてよく見てみると、確かにブランコの揺れと天幕内の団扇の動きは連動していた。
「まぁ! 遊びながら仕事をするとはそういうことだったのですね」
エルナが理解したのを見て、リッカはニッコリと笑った。
「テントを設置したのは数日前なのですが、上手く稼働しているようで良かったです。テントを降ろしたことだし、ついでにこれも……」
リッカは天幕に描かれた魔法陣に手を当て、小さく呟く。
「〈雪粉〉」
手元の魔法陣が一瞬光ったと思ったら、テント内に粉雪が舞い始めた。
「これは……雪?」
リッカはコクリと頷いた。