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新人魔女と師匠の静かなる時間(1)

 静かな時が流れていた。新人魔女のリッカは、自室の窓を開け放ち、その眼下に広がる街並みを見つめている。


 王都エル・ヴェルハーレ――大陸中央部に位置するこの国は、古来より魔術が盛んに研究されてきた地だ。王都周辺には昔から多くの魔術師たちが住んでいた。ここ数年は魔獣の増加に伴い、山間で生活していた魔法使いや魔女たちが王都に居を移したこともあり、魔術研究はさらに盛んになっている。それに伴い、王都の発展は近年その勢いを増していた。


 また、王城を中心にして広がる城下の街も非常に栄えており、人の往来も多く賑やかな場所となっている。


 そんな王都の街並みを一望できる小高い丘に、リッカの自宅はある。丘の上から見える景色は絶景で、特に夜になると星空が綺麗に見えるため、リッカはこの自宅からの景色が好きだった。


 頭上には満天の星。眼下には星の煌めきに似た街の明かり。まるで光の湖に飛び込んだようだと、いつも思う。街の喧騒を遠くに聞きながら、ぼんやりと風景を楽しむ。それがリッカの日課だった。


 だが、そんなゆったりとした時間を邪魔するように、俄かに家の中が慌ただしくなった。こんな夜更けにどうしたのだろうか。疑問に思い、部屋を出る。


「何事ですか?」


 リッカは玄関先に佇む母の背中に声をかけた。すると寝巻き姿の母は振り返り、リッカの顔を見ると一瞬驚いたように目を見張ったが、すぐに表情を取り繕った。


「あら、起こしてしまったかしら」

「いえ……まだ寝ていませんでしたから。それより、何かあったのですか?」


 そう言うと、母は困ったような笑みを浮かべる。


「何でもないわ。お父様がご用事で出て行かれただけよ……」


 母の言葉を聞いて、今度はリッカの方が目を丸くする番だった。


「それは珍しいですね。一体こんな夜更けにどちらへいかれたのですか?」


 リッカの父は普段、あまり外出しない。そもそも仕事以外で家を出ること自体が少ない。そんな、父が夜更けに出かけたと聞いて、リッカは不思議に思った。


「……ええ、ちょっとね……。朝までには帰ってくるようだから心配はいらないわ。それよりも体が冷えてしまうわよ。早くベッドに戻りなさい。私ももう休むから……」


 歯切れの悪い言葉を残し、母はそそくさと自室へ戻っていく。その後ろ姿を見送りつつ、リッカは首を傾げた。


 あの父がこんな時間に外へ出るなんて、どういう風の吹き回しだろう。それに、母の様子もどこかおかしかった気がする。

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