新人魔女と大きな宝石と新作スイーツ(5)
ミーナはそう言うと、肩を竦めて見せた。
「では、暫くはこのまま保管しておくおつもりですか?」
リッカがそう言うとミーナが頷く。
「ええ。そうなるわね」
エルナとリッカが顔を見合わせる。
「高い買い物をしたのに、なんだか勿体ないですね」
文字通り宝の持ち腐れとなってしまっている現状に、エルナは眉尻を下げる。エルナの反応に、ミーナが苦笑した。
「こればっかりは仕方がないですね。今回は商才よりも私の趣味を優先させたようなものだから。私の趣味に共感してくれるお客様が来て下さることが何よりだけど」
楽観的にそういうミーナだが、その心情は複雑なのだろう。リッカとエルナはそんなミーナを心配そうに見つめた。
宝石の鑑定が出来ないことが最大の問題点なのだ。リッカとエルナがどうしたものかと考えあぐねていると、突然カーテンが開き、ジャックスが顔を覗かせた。
「おい。まだ店が開いているようだが……」
そう言いながらやって来たジャックスは、リッカとエルナの姿を目にしてバツが悪そうに頭を掻いた。
「おっと……これは嬢ちゃんたちか。すまねぇ、邪魔をしたな」
リッカはジャックスの言葉に首を横に振る。
「いえ、わたしたちはコレを見せて頂いていただけですから」
リッカはそう言って宝石へ視線を送る。ジャックスは、「あぁ、それか」と相槌を打ちながら、少々渋い顔をした。その様子をリッカとエルナが不思議に思っていると、ミーナが少し頬を膨らませてその答えを口にした。
「この人、私の好きにさせて失敗したって思ってるのよ」
「いや、そんな事はねぇが……まぁ、金貨八〇〇枚だからな……何とかならんものかと心配しているだけだ」
ジャックスは、慌てて言い訳を口にしながら、「まぁまぁ」とミーナを宥める様に彼女の肩に手を置いた。
「何か良い方法を考えるわよ」
大人げなく膨れっ面になっているミーナに代わり、ジャックスは大きな宝石に布を掛ける。それから、リッカ達を促してVIPルームを後にした。店へ戻るとジャックスはミーナへ声をかける。
「今日はまだ客が来るのか?」
「いいえ。今日はもう来ないわ」
「じゃあ、俺が店の片付けをやるから、嬢ちゃんたちの飲み物を淹れてやってくれ」
「あら? ありがとう。二人とも少し待っててちょうだい」
お茶の用意のため再び店の奥へ行こうとしたミーナをリッカが呼び止める。
「あっ、ミーナさん! お茶請けはコレで」
リッカがスイーツ・ミッションの包みを掲げて見せた。