新人魔女と大きな宝石と新作スイーツ(4)
リッカとエルナはラウルから貰ったケーキを手にミーナの店へやって来た。
「こんにちは、ミーナさん」
二人が声をかけながら店へ入ると、それに気付いたミーナが笑顔で挨拶を返す。
「あら? いらっしゃい」
「ミーナ先生、こんにちは。本日はお手紙に書いてあった宝石を見せていただければと伺いました」
エルナがそう言うと、ミーナはにこりと微笑んだ。
「ああ、アレね。どうぞ。ちょうど先ほどまで商談のために出していたから、まだ見られますよ」
三人は店の奥へと進む。案内された場所には、布で仕切られた一角がありその奥に件の宝石があるようだった。リッカとエルナは、少し落ち着かない様子で辺りを見回す。そんな二人の様子を見て、ミーナはクスリと笑みを零した。
「店とは雰囲気が違って落ち着かないかしら? ここは所謂VIPルームというやつでね。高価な品の商談の際に使う部屋なの。ほら、あれよ」
ミーナが示した先、布の向こうへ目を遣ると、そこには大きな宝石の箱があった。エルナとリッカはその箱に釘付けとなったように視線が動かせなくなった。
「やっぱり大きいですね」
思わずそう呟いたリッカにミーナが頷く。
「ええ、本当に。これは店の目玉になると思ってオークションで競り落としたんだけどね……」
ミーナはそう言って、困ったように眉尻を下げた。そんなミーナの様子にリッカが首を傾げる。
「何か問題でも?」
「ええ。オークションの時にも大きすぎるので純度の鑑定をしていないと言っていたけど、本当に鑑定出来る人がいないみたいなの。何人かの鑑定人に依頼したのだけど、皆、匙を投げてしまって」
ミーナはそう言ってため息をつく。エルナはその宝石箱から視線を外すと、何か言いたそうにリッカを見た。リッカもその視線に気づき、肩をすくめる。流石のリッカも宝石の鑑定スキルは持ち合わせていない。
ただ、見た感じではリッカが行く洞窟にある水晶と同程度の純度ではありそうだった。
「ミーナ先生、因みにコレの使い道はどの様にお考えなのですか?」
「店の目玉商品にするつもりだったの。とは言っても、コレほどの物だから、すぐに買い手は付かないだろうから、しばらくは集客アイテムになるだろうと思っていたのだけど」
エルナの質問にミーナがそう答える。
「でも結局、鑑定が出来ないから、今のところ無価値なのよ、コレ。価値のないものを集客に使うわけにもいかないでしょ? だから、今は特別な方にのみお見せしているの」