新人魔女の初体験(5)
三人は揃って食堂へ移動する。食堂には既に食事が用意されていた。
「あれ? わたしの分まで」
リッカは首を傾げる。そんな娘を見てロレーヌが呆れたようにため息を吐いた。
「当たり前でしょう。お客様がいらっしゃると言うのに、昼食も済んでいないなんて、そんなこと許されるわけがないでしょう?」
「昼食の準備が出来たところで、リッカさんのお部屋へ行こうと思っていたのですよ」
エルナまでもが、さも当然という顔でそう話す。リッカは呆然と二人の話を聞いていた。
「どなたがいらっしゃるのですか?」
「ネージュ様ですよ。あら? リッカさんは本日の予定をご存知だと伺いましたけれど?」
エルナが驚いたようにそう告げる。その言葉に驚くリッカ。思わず声を上げていた。
「えっ!? 本日リゼさんが来ることを何故ご存じなのですか? わたし、事前に伝え忘れてしまったと思って、慌てて部屋を出て来たのですよ」
「何故って、ネージュ様から直接ご連絡を頂きましたから」
エルナは不思議そうな顔でそう言う。どうやら、エルナとロレーヌは既にリゼの訪問を知っていたようだ。
「ああ、そういうことでしたか……」
取り越し苦労に終わったリッカはホッとしつつも、ガックリと肩を落とした。そんな娘の姿を目にして、母ロレーヌは眉を顰める。
「貴女ね。本日の予定を知っていたのなら、どうして前もって知らせないのですか。今日はエルナが朝食時に知らせてくれたから、なんとかおもてなしの準備が出来ましたけれど、知らずに相手をお迎えすることになっていたら、大変なことになっていたのですからね。状況をきちんと分かっているのですか?」
リッカは母の言葉に素直に頷いた。それから、小さく謝罪の言葉を口にした。そして、リゼがいつ頃到着するのかをエルナに尋ねる。
「そうですね……あと二時間ほどかしら?」
「そんなに早くですかっ!?」
リッカは驚いて声を上げた。
「そうですよ。のんびりとしている時間はありません。急いで昼食を済ませましょう。リッカ、貴女はネージュ様をお迎えするお支度もしなければいけませんよ。くれぐれも恥ずかしくない格好でね」
そんな母からのお小言を聞きながら昼食を済ませると、リッカは支度をするべく、そそくさと自室へ戻った。
「このあとの作業のことを考えると、略式であってもローブは邪魔なんだけどなぁ……まぁ、作業を始める前に脱げばいいか」
ブツブツと独り言を呟きながら、リッカは略式ローブを羽織った。