新人魔女の初体験(4)
投げやりな態度の師にリッカは自身の頭の中にある案をあれやこれやと伝え、作業場を改装してもらう。
そうして、二人が改装作業を終えたのは、辺りが薄らと白み始めた頃だった。
リゼの使役獣で空を飛び、あっという間に自宅へと送り届けてもらったのだが、その頃にはもうリッカは限界を迎えていた。
「良いか? 明日は……いや、もう今日か。今日は昼食後に君の家に伺う。家の者にしかと伝えておくように」
「ふぁい。分かりました」
リッカは眠そうに目を擦りながら頷く。リゼはそんなリッカにため息を吐くと、使役獣と共に明け方の空へと消えていった。
リゼを見送ったリッカは、着替えもそこそこにそのままベッドへ倒れ込み意識を手放したのであった。
それから数時間後の今。昨日の出来事を一つ一つ思い返えしていたリッカの頭はしっかりと覚醒した。慌ててベッドから飛び起きる。
(今何時だろう?)
リッカは部屋の時計を見た。その針が指し示すのは朝とも昼ともいえる時間帯だ。いわゆる昼食どき。
「しまった……今日のこと、まだお母様たちに知らせてない!」
リッカは慌てて部屋を出た。
「あら、リッカ。ようやく起きてきたの? 明け方に帰ってくるだなんて、随分とお仕事が忙しいようね」
食堂へと向かう途中でリッカは母ロレーヌと出くわした。リッカの朝帰りを使用人から聞いたのだろう。棘のある挨拶をする母に、リッカは苦笑いを返す。
「ご心配をお掛けして申し訳ありません」
「良いこと? 貴女は女の子なのですよ! お父様のように仕事ばかりしていてはいけません。まったく……こんな時間まで寝ているだなんて。淑女として恥ずかしいことなんですからね」
口数の多さから、どうやらご機嫌ななめのようだとリッカは悟る。
(これは少しでも早くリゼさんのことを伝えないと、後々大変なことに……)
リッカは母の小言に適当に相槌をうちながら、どうやってこの状況を打破しようかと思案する。
そんなリッカの背中に声がかかった。
「あら、リッカさん。おはようございます。もう少ししたら、お声をかけに行こうと思っていたのですよ」
義姉のエルナが嬉しそうにそう告げる。
「おはようございます。お姉様」
リッカが挨拶を返すと、エルナはニコリと微笑んでから、ロレーヌの方へ顔を向けた。
「お義母様。準備は間に合いそうです」
「そう。良かったわ」
どうやらロレーヌの機嫌はエルナの出現により直ったようだ。
(それにしても準備とは一体何のことだろう?)