新人魔女が目指す、本当の背中(7)
「こちら側の魔法陣を設置する場所は、既に決まっていますか?」
「いや、まだだが」
「でしたら、わたしの作業場に設置してください」
「構わぬが、なぜだ?」
「ここなら常にセバンたちが働いているので、魔法陣の管理も任せられますし」
リッカの答えにリゼは少し考える。そして、直ぐに頷いた。
「まぁ、そうだな。管理する者がいる方が都合は良いか……」
リッカは嬉しそうに笑って頷く。この作業場にまた一つ新しい魔法設備が加えられる。その事実にリッカは胸を躍らせた。
「では、事のついでにこちら側の魔法陣の設置をおこなってしまおう」
「はい!」
リゼの言葉にリッカは元気良く返事をする。それからぐるりと作業場内を見回した。
「じゃあ、入口の隣に設置しましょう」
リッカは満面の笑顔でそう言うと、パタパタと扉の方へと向かう。リゼはそんなリッカの背中を呆れた表情で見つめていた。
それからしばらくの間、二人は作業場の入口近くで魔法陣について話し合う。リゼは転移魔法陣について、リッカにその構成や魔力の流し方について事細かに説明をする。リッカはその一つ一つを真剣に聞き、新たな知識として吸収していく。
「魔法陣のこの部分は、どのような意味をもつのですか?」
「その部分はだな……」
そんな会話が何度も繰り返され、その都度リッカでも扱える魔法へと二人は魔法陣の構成を組み換えていった。
そして二人が魔法陣の改良を始めてから数時間が過ぎた頃、ようやく魔法陣の組み換えが終わった。リゼは大きく息を吐く。長く魔法について話し続けていたため少し疲れたようだ。
「まさか、これほどまでに魔法陣を組み換えることになるとは……」
リゼが小さく首を横に振ると、リッカが申し訳無さそうに頭を下げた。
「すみません。わたしにリゼさん程に魔力量がないばかりに、魔法陣の組み換えに時間がかかってしまって……」
「いや、私の読みが甘かったのだ。普段は他者の魔力量のことなど気にせずに魔法陣を組むからな。君くらいの魔力量で転移魔法陣を組むと、これほど面倒なことになるとは思いもしなかった」
リゼは少し考え込むように目を閉じる。それからゆっくりと目を開けると、リッカを見た。
「君に無理をさせてしまったようだな」
リゼの言葉にリッカは慌てて首を横に振る。
「いえ! そんな! わたしは、新しい魔法に触れられて楽しかったですから!」
リッカの満面の笑みに、リゼもつられて頬を少し緩める。
「それならば良いのだが」