新人魔女が目指す、本当の背中(3)
「君が何を怒っているのかは分からんが、私は別に男性優位の考えは持っていないぞ」
「だって、能力の低い魔女とは同列に見られたくないんでしょ!」
一層表情を険しくするリッカに、リゼは困ったように頭を掻く。それからゆっくりと口を開いた。
「君は何か誤解しているのではないか? 私は別に魔女という職業を軽んじてなどいない。魔女だろうと商人だろうと、能力のある者が台頭する。大いに結構なことではないか」
「でも、さっき……」
「私は『能力の低い者と同列に見られたくない』と言ったのだ。それは、魔女を指した言葉ではないし、別の職を指すことでもない。ましてや女性を軽視しての言葉などでは断じてない」
リッカは、「でも」と納得いかない顔でリゼを見つめる。そんなリッカにリゼは少し困ったように口を開く。
「考えてもみなさい。私の姉上は国王なのだぞ。国の頂点に立つ者だ。もし仮に私が男性優位の考えを持っていたのならば、姉上よりも私の方が国の跡継ぎに相応しいと奮起していたはずだ。男性優位の考えを持つという君の父上を唆し、早々に王位継承第一位の座を姉上から奪っていたに違いない」
「そ、それは……」
「だが、私は姉上を蹴落とすつもりなど毛頭ないし、それどころか姉上を尊敬している。これからも姉上の、現国王のもとで、この国の為に力を尽くすつもりだ」
リゼの淡々とした言葉に、リッカは目を大きく見開き呆然とする。そして、自分の早合点に気づき顔を真っ赤に染め上げた。
「す、すみません! わたしったら勘違いをして……失礼なことを言ってしまい申し訳ありませんでした」
「まぁ、良い。この国に男性優位と考える者がいることは確かだしな。個人の能力値を無視して、性の別だけで優劣を判断するなど愚かしいことだが」
リッカはリゼの言葉に大きく頷き、同意の意を示した。そんなリッカにリゼはあからさまに大きく息をつく。
「君は、男性優位の考えに対して大変憤っているようだが?」
リゼが、リッカに静かに問いかける。
「それはそうですよ。わたしは、女はしっかりと家を盛り立てろ、なんて言われるのはおかしいと思うんです」
リッカは勢いに任せて、ズイッとリゼに顔を近づける。リゼはそんなリッカの勢いに気圧され、思わず仰け反った。
「ま、まぁ、人には適材適所というものがあるからな。向き不向きもあるし、女性だからと一括りにするのは良くないとは思うが」
リッカは理解者を得たとばかりに目を輝かせた。