新人魔女と憧れのあの人(6)
リッカは肩から下げていた鞄を開けると、中から素材をいくつか取り出した。
「これを買い取っていただきたいのです。……お願いできますか?」
「……これは?」
目の前に置かれた肉の塊を見て、ミーナは不思議そうな顔をした。
「魔熊の肉です」
「……魔熊って……こんなにたくさんどうしたの?」
「倒しました」
「……え? あなたが?」
「はい」
リッカの言葉を聞き、ミーナは目を丸くした。そして、まじまじとリッカの顔を見つめた。
「嘘でしょう? だって、魔熊はBランク以上の冒険者が何人も集まって討伐するような危険な魔物なのよ?」
ミーナの言葉に、そばに居たジャックスは苦笑いを浮かべる。
「ああ。俺も最初は驚いたが、嬢ちゃんの力なら、一人でも倒しちまうだろうよ」
ジャックスの言葉を聞いて、ミーナはますます驚いた表情をした。
「へぇ……。こんな小さな女の子がねぇ……」
感心したように呟くと、ミーナは視線を素材に戻した。
「それで、魔熊だったら、血液とか体液が最も高く買い取れる素材だけど、そちらはないのかしら? 爪や牙なんかもあると嬉しいわ」
「すみません。実は爆散させてしまったので、ほとんど残らなかったんです」
「……爆散……」
リッカの返事に、ジャックスとミーナは揃って口を閉ざしてしまった。
「……あの……?」
沈黙に耐えきれず、リッカは声を上げる。すると、ジャックスがハッとしたように口を開いた。
「あっ……いや……その、魔熊を爆散させるとは、さすが嬢ちゃんだ」
そう言ってぎこちなく笑った。そんなジャックスの様子にリッカが不思議そうに首を傾げていると、ミーナが明るい声で言った。
「それじゃあ、あなたが持っている魔熊の素材は全部買取らせて頂くわ。状態も良いから、少し色をつけさせてもらうけど、構わないかしら?」
「はい! よろしくお願いします」
リッカが頭を下げると、ジャックスはホッと息を吐き「良かったな、嬢ちゃん」と言った。
それから、全ての素材を換金し終えたリッカは、ミーナの誘いでお茶をすることになった。店の奥には居住スペースがあり、そこでミーナ、ジャックスと共に三時のティータイムを楽しむことになったのだ。
出されたクッキーを、フェンが嬉しそうに尻尾をフリフリしながら食べている。その様子をミーナはニコニコとしながら見ていた。
紅茶を飲みながら談笑していると、ふとジャックスが口を開く。
「嬢ちゃん。前から気になってたんだが、なんでそんなに強いんだ?」