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新人魔女が聞いた襲撃犯のその後(8)

 その眼差しに、エルナを危険に晒した相手に対する彼の怒りを感じ取り、渋々頷いたリッカの隣で、それまで考え込んでいたエルナが思い切ったように口を開いた。


「事件を起こしたのですから、処罰されるのは当然のことだと存じます。ですが、その処罰を下される前に、お聞き届け頂きたいことがございます。テレシア・ベレナスを(わたくし)に頂きたいのです」


 エルナのいつになく強い口調に、国王も重鎮たちも、そしてリゼとリッカまでもが驚いたように目を見開く。程なくして、謁見の間はざわめきだした。そんな中、国王マリアンヌが静かに手を翳し、それにより謁見の間がシンと静まり返った。


「何故だ? ()の者に報復でも果たそうと言うのか?」


 国王の言葉にエルナは小さく頭を振る。


「そうではありません。テレシアを私の専属護衛にと望みます」


 エルナの言葉に謁見の間にいる者たちは再び驚愕した。リゼが慌てたように口を開く。


「な……何を仰るのですか? 貴女を傷つけようとした者を側に置こうだなんて……」

「問題ありません。自身を召し上げた者に対して、人は牙をむくでしょうか? 私は確固たる忠誠心を得られるような気がするのですが」


 エルナはそう言って、悪戯っぽく笑った。エルナのもっともらしい意見に、しかしリゼは納得がいかないと言いたげに首を左右に振った。リゼが言葉を発する前に、エルナはニコリと微笑み言葉を続ける。


「それから、レンバーグ家の御令嬢も私が召し上げます」

「は……?」


 エルナの言葉にリゼは間の抜けた声を漏らした。


「ですから、テレシア同様、レンバーグ家の御令嬢を私の庇護下に置かせていただきたいと存じます。本人に罪はなくとも、親が罪を犯した令嬢など今後引き受け手はございませんでしょうから」


 エルナの申し出にその場にいる全員が驚愕した。


「ま、待ってください! そのようなこと……」


 弟の狼狽ぶりに国王マリアンヌは何処か面白そうに目を細める。


「罪人に償いの機会を、か……」


 国王の言葉にエルナは穏やかな微笑みを浮かべた。


「しかし、それは……」


 異議を唱えようとする弟を国王はサッと手で制し、凛とした声を響かせる。


「今回の罪人の処罰を一部撤回する。罪人テレシア・ベレナスをエルナ嬢へ引き渡す。ヴァンデル・レンバーグの処罰はそのままに、レンバーグ家の息女をエレナ嬢へ引き渡す旨を罪状に追加する。以上」


 国王の言葉に重鎮たちが一斉に頭を下げた。


「では、本日の謁見はこれにて終了とする」

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