新人魔女が聞いた襲撃犯のその後(7)
その後ヴァンデル・レンバーグの態度があからさまに悪くなったが、しかしまさか、そのことが原因で襲撃事件が起こるとは思いもしなかったとリゼはどこか申し訳なさそうに呟いた。
「つまりは、レンバーグ家の御当主様は、婚約の申し出を断られた逆恨みで襲撃を企てたと?」
リッカの問いに国王が渋い表情を見せる。
「いや、ヴァンデルが事を企てたのは確かだが、本人曰く、逆恨みから襲撃をしたのではないと……」
国王の言葉にリッカとエルナは首を傾げる。
「ヴァンデルは、自身の娘が婚約者候補として検討される余地がなかったことに納得ができなかったそうだ。エルナ嬢を殺めるつもりは初めからなく、少し怖い思いをすれば婚約辞退を申し出るだろうと考えたようだ。さすれば、婚約の内定からやり直しとなり、レンバーグ家にもチャンスがあるのではないかと」
「なんて身勝手な……」
リッカは思わず怒りで唇を噛み締めた。エルナも事の真相を知り、ショックだったのか言葉を無くしている。二人の様子を見てリゼが心中を察するかのように口を開いた。
「全く……浅ましいにも程がある」
その言葉にリッカは深く頷いた。
貴族の中でも爵位持ちの家とは、過去に王族との姻戚関係になった由緒正しい名家ばかりなのだ。そのような名家の当主が、このような馬鹿げた理由から事件を起こそうとは。
「あの、陛下。少々お尋ねしたいのですが……」
広間に降りた一瞬の静寂を、エルナが静かな声音で破った。
「なんだ?」
「私共に事のあらましをお聞かせ頂いたということは、もう処罰は下されたということなのでしょうか?」
エルナのもっともな質問に国王は「いや」と首を横に振る。
「どのような処罰とするのかについては既に決まっているが、まだ実行はされてはおらぬ」
国王の言葉に何故かエルナはホッとした表情を浮かべた。
「死者が出なかったとはいえ、王城内にて襲撃があったことは事実。実行犯テレシア・ベレナスは、国外追放。計画を企てたレンバーグ家は爵位剥奪、領地没収の後、下級貴族への降格処分を予定している」
国王の言葉にエルナは何やら考える素振りを見せる。
その隣でリッカは驚愕していた。実行犯の国外追放は当然として、エルナを危険に晒した首謀者の処分が軽すぎるのではないか。
リッカの不服そうな様子に気づいたのか、リゼがリッカと目を合わせる。
「城で起きた騒ぎとはいえ、一貴族であるエルナ嬢の立場を考えると、この処罰が妥当と判断した」