新人魔女が聞いた襲撃犯のその後(6)
国王の言葉に、リッカとエルナは驚いたように顔を上げる。
「失礼ながら申し上げます。いったいどのような経緯でそのような者が王城に居たのでしょうか?」
リッカは当然の疑問を口にした。冒険者とは、基本的に人々から依頼を受けて魔物討伐や薬草採取など、街の外での体を張った活動を主な生業としている者のことを言う。それを職業としている者たちは、元来、自由気ままな気質の持ち主であることが多く、厳格を好む貴族や王族とはあまり関わりを持ちたがらない。そのような者が何故、城の広間に居たのか。
「それなのだがな……」
国王は少し言い辛そうに口ごもる。その様子を見てリッカとエルナは互いに顔を見合わせた。重鎮たちの間に緊張が走る。
「実は、城へ出入りする貴族の一人が自身の娘だと偽って、彼の者の城への入城を手引きしたのだ」
国王の言葉をリゼが苦々しげな表情で継ぐ。
「手引きした者の名は、ヴァンデル・レンバーグ。その者が此度の襲撃の首謀者だ」
リゼの言葉に謁見の間の空気が一層張り詰める。重鎮たちが一様に押し黙る中、リッカとエルナは驚きに目を見開いた。
「まさか。首謀者がレンバーグ家の御当主様だと仰るのですか?」
リッカは思わず問い返してしまった。エルナもまた信じられないと言わんばかりの目でリゼを見ている。リゼは端正な顔に似合わないほどの深い皺を眉間に寄せて頷いた。
「レンバーグ家といえば、王族とも血縁関係のある現爵位家ではありませんか。なぜそのような方が……」
エルナが震える声で呟く。
周りの空気が一層張り詰める中、リッカは、あることに気がついた。しかし、まさかそのようなことがあろうかと眉を寄せる。リッカは小さく溜息を吐きながら首を左右に振った。そのようなくだらない理由でエルナは危険に晒されたのか。リッカは、湧き上がる苛立ちを隠すように震える拳を握った。
「その様子では、今回の企ての理由に気がついたようだな」
リッカの隠しきれなかった怒りを察して、リゼが静かに口を開いた。
「ヴァンデル・レンバーグは、自身の娘を私の妃にし、自身の爵位を押し上げたかったのだと自供した。全く、呆れるほどくだらない理由だ」
爵位持ちのヴァンデル・レンバーグには、リゼが皇太子の座に就くことを立太子礼が行われる前に伝えていたらしい。すると、早速、自身の娘を婚約者にどうかと打診してきたのだとか。しかし、リゼはその申し出を検討するまでもなく軽くあしらったらしい。