新人魔女が聞いた襲撃犯のその後(4)
「被害を最小限に食い止めることができたことは、リッカ嬢の献身的な行動によるところが大きい。今後ともその高潔な精神と知識をこの国の為に役立ててほしい」
リゼの格式ばった態度と言葉がいつものそれとは違い過ぎて、リッカは一瞬反応が遅れてしまった。そんなリッカにリゼは今までに見たことのないようなとても慈悲深い笑みを向ける。まるで作り物のようなリゼのその表情を見て、リッカは慌ててその場に跪いた。リゼの笑みの中にある種の威圧のようなものを感じたのだ。
「この度は、我が身に余る光栄なお言葉を賜りまして、誠に光栄にございます。これより後もより一層の精進を重ねてまいります」
リゼは跪くリッカを満足げに見つめた後、エルナに向けて笑顔を向ける。
「エルナ嬢。此度は怖い思いをさせてしまい、大変申し訳なかった。貴方にはさぞ辛い思いをさせてしまったことだろう。王宮内の警備隊が機能しなかった点については極めて遺憾であり、今後の警備強化を徹底する所存ではあるが、まずは謝罪をさせてほしい」
リゼの言葉にエルナはただ黙礼するのみで応えた。リゼは真剣な表情でエルナを見つめ、少し悲しげに微笑んだ。
「貴女にはこのような辛い思いを二度としてほしくはない。しかし、これからの貴女の立場においては、今回のような事件に巻き込まれることも予想されましょう」
リゼの言葉にリッカは愕然とした。エルナにはお守りがあるとはいえ、これからの人生をずっと怯えて暮らしていくことを求めるなんて酷すぎる話である。本当に警備体制を強化しようと考えているのか疑わしい。そんな懸念が胸中を過る。エルナはリッカの不安そうな雰囲気に気づいてか、安心させるように優しく微笑んだ。
それから、壇上のリゼと国王マリアンヌを見据えて、エルナは凛とした表情で口を開いた。
「お心遣い、感謝いたします。ですが私は覚悟をもって、リゼラルブ様の妻となることを決めました。ですからどうかお気になさいませぬよう」
エルナの毅然とした態度に国王が満足そうにゆっくりと頷いた。玉座の隣に立つリゼはエルナのことを眩しそうに見つめる。その眼差しはまるで女神でも仰ぎ見るかのようにうっとりしている。リゼの様子にリッカは内心で呆れながらも、国王陛下の御前で跪くエルナが堂々とした態度でいる姿に頼もしさを感じた。ふわりとした見た目から、つい庇護欲を駆られてしまうが、案外義姉は自分が思う程弱くないのかもしれない。