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新人魔女が聞いた襲撃犯のその後(3)

 リッカは、当日の朝に走り書きなどで連絡を寄越した壇上の師匠に向けて恨みがましい視線を送る。リゼはそんなリッカの視線に気づいているだろうに、全く意に介する様子も見せず涼しい顔で佇んでいた。


 リッカと共に謁見の間へと入った父イドラは、いつの間にか娘たちから離れ、宰相として重鎮の列に並んでいる。謁見の間の中央、玉座の正面となる場所には、リッカとエルナの二人が並んで立つこととなった。


 自身は何も悪いことなどしていないし、今回の呼び出しの理由も分かっている。それなのに、周囲の大人たちから発せられる気詰まりな雰囲気に、リッカは思わず身を固くした。チラリと隣に立つ義姉の顔を見れば、表情にこそ出していないが、やはりどこか不安げだ。


 そんな義姉の様子を見て、リッカはそっと彼女の手を取った。自身を奮い立たせるためでもあり、エルナの不安を和らげるためでもある。エルナは少し驚いたように目を見開いたが、すぐに嬉しそうに微笑んだ。


 リッカたちが重苦しい雰囲気に耐え忍び、国の頂点に座す人物の登場を今か今かと待ちわびていると、ようやく国王陛下が謁見の間に姿を現した。それと同時に、スッと謁見の間のざわめきが消え、空気が一層張り詰める。


 重鎮たちが一斉に首を垂れるのに倣ってリッカとエルナも頭を下げた。国王マリアンヌはゆっくりとした動作で玉座に腰を下ろす。そして、静かに口を開いた。


「面を上げよ」


 国王の言葉に、重鎮たちは一斉に顔を上げる。リッカとエルナも顔を上げた。


「エルナ嬢、リッカ嬢。よくぞ参られた」


 マリアンヌはそう言葉をかける。リッカとエルナは揃ってドレスの裾を少しつまみゆっくりと腰を落としてお辞儀をした。


「本日、其方らを呼び出したのは他でもない。先日、王城内にて起きた襲撃の件についてだ」


 重苦しい空気が謁見の間に流れる。誰も言葉を発しない。重鎮たちには既に報告が行われているのかもしれない。リッカが重鎮たちの様子を伏し目がちに観察していると、国王に代わりリゼが口を開いた。リッカは声の主へそっと視線を向ける。


「此度、リッカ嬢には私の婚約者を身を挺して守っていただき、大変感謝している」


 リゼがいつもよりもキリリとした皇太子然とした表情で真っ直ぐにリッカを見つめてきた。リゼの言葉を受けて重鎮たちの視線が一斉にリッカへ集まる。突然大勢から注目されたことにたじろぎながらも、リッカは貴族令嬢らしく小さく腰を落とすことで応えた。

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