新人魔女が聞いた襲撃犯のその後(2)
ちょうど父イドラが朝食を終えたところだった。
「おはよう二人とも」
イドラが声を掛けると、二人は揃って朝の挨拶を返す。
「お義父様、おはようございます」
「おはようございます、お父様。本日は少々遅めの朝食なのですね」
リッカの言葉に、イドラは頷いた。
「本日は、お前たちと登城しようと思ってな」
イドラの言葉にリッカとエルナが同時に首を傾げた。そんな二人の様子に、イドラは苦笑を浮かべる。
「本日の呼び出しは先日の王城での襲撃犯についての事後報告だ。二人ともそう固くなることはない。本来ならば、家長である私に内々に伝えられそれで終わる話だ」
父の言葉を受けても二人はどこか緊張の面持ちである。
「しかし、今回はお前たちこそが当事者だ。今後の為にも是非とも直接話しておきたいと、リゼラルブ様が望まれたのだ」
「そうですか……。ですがわたしは正直、襲撃犯が誰であろうと、どうなろうとあまり興味がないのですが」
リッカが溜息交じりに本音を漏らす。王城での襲撃から既に十日以上経っている。あの件については既に決着がついていたものと思っていたのだが、どうやらそうではなかったらしい。
「まあ、そう言うな。エルナは狙われ、お前は直接対峙したのだからな」
イドラの苦笑交じりの言葉にリッカは不服そうに肩を窄めた。エルナは不安そうに瞳を揺らしながら父を見つめる。
「なぜ、ネージュ様は私たちにそのようなお話をしたいのか、お義父様はご存じでしょうか?」
イドラはそんな娘の様子を心配げに見遣る。そして、安心させるように優しく微笑みかけた。
「リゼラルブ様は、お前たちを心配されているのだ。今回のことをこれからの教訓としてほしいのだろう」
イドラの言葉にリッカとエルナはそれぞれに思うところがあるような表情を浮かべた。リッカは純粋に迷惑だと言いたげな表情で、エルナはいつまでも不安げな表情である。そんな二人に苦笑いを浮かべ、イドラは二人に朝食を摂るよう促した。
リッカとエルナの朝食が終わると、三人は馬車に乗って城へと向かった。王城の門をくぐり抜け、案内役によって通された場所は、以前に通されたプライベート用の部屋ではなく謁見の間だった。つまり、今回の呼び出しはリゼ個人の思惑からではなく、王命であったということだ。謁見の間には、既に国の重鎮と言われる貴族の面々が揃っていた。思っていたよりも大ごとのようだ。それならば、どうして事前に連絡をくれなかったのか。