新人魔女とアドバイザー(4)
「え? 改良ですか?」
リッカはエルナの突然の発案に首を傾げる。そんなリッカの反応にエルナは力強く頷いた。リッカが困惑していると、エルナは例えばと言って話す。
「こちらに入っている花が、天気や気温によってその色を変えるとか」
「色を変えるのですか? 花が?」
「ええ。天気が分かれば実用的だと思いますし、それほどの物ならば、何かしらの研究成果を組み込まなければならないと思うのです」
エルナの言葉にリッカは考え込んだ。確かに、天候が予め分かるような物があれば重宝されるだろうし、状況によって色が変わるなんて可愛らしい物であれば女性に人気が出そうだ。しかし、リッカはエルナの言う改良についていまいち手応えを得られなかった。何をどのようにすればエルナの言う状態に出来るのか、すぐには良いアイディアが浮かばない。思わず黙り込んでしまったリッカに、エルナは微笑む。
「何もそのまま形にしなくても良いのですよ。今のは、例えばの話ですから」
「ですが……」
言葉を詰まらせたリッカに、エルナは微笑みかける。
「観賞用というからには、それを目にする意味みたいなものが込められていると良いと思ったのです。そのためにリッカさんが研究開発出来る物であると、尚良いのですけれど」
エルナの言葉にリッカは思案気な表情を浮かべた。そして暫くして「そうですね」と小さく呟く。
「現実問題として、依頼を受けている物なので試作に使える時間はそう多くありません。その限られた時間で何か新しい研究を始めるというのは正直難しいと思うのです。そうなると、これまでの知識を活用してアイテム作成をするべきだと思うのですが……」
リッカの答えにエルナは「ふふ」と笑った。リッカの意識は、次第に目の前の義姉ではなく自身の中での自問に向いていく。
「今回は魔道具ではなく観賞用だから、出来るだけ魔法の多用は避けるべきだよねぇ……」
リッカは腕を組んで考え込む。そんなリッカの表情をエルナは微笑みながら見守っていた。しばらくの間、沈黙が室内を満たす。
やがて、何かを思いついたようにハッと顔を上げたリッカは、エルナへ視線を戻した。その真剣な表情に、エルナは首を傾げる。リッカの視線は義姉の胸元で止まっていた。あまりに胸元を凝視されるので、エルナは思わず身動ぎする。
「あの……、リッカさん?」
恐る恐る声をかければ、リッカはハッとしたように視線を逸らした。そして少し慌てた様子で話し出した。