新人魔女とアドバイザー(3)
エルナの突然の言葉に、リッカは首を傾げる。そんなリッカにエルナは優しく微笑んだ。
「ラウルさんのための氷精花の栽培にはネージュ様も協力してくださったのでしょう? それは、受けたお仕事に新しい研究テーマがあったからではないですか?」
「ええ。試してみたいことがあると乗り気でした」
エルナの指摘にリッカは頷く。
「だったら、ミーナさんのお仕事にも何か新たな試みを組み込めばよいのではないでしょうか。研究の一環としてお仕事を請け負っている。そのような理由であれば、リッカさんの知識向上のための時間をネージュ様が疎ましく思う訳がありません。これからお仕事を請け負う時は、新しい知識や技術を得る機会とすれば良いのですよ」
「そう……でしょうか?」
リッカ自身も昨日師匠に同じようなことを言ったのだが、その時は納得してもらえなかった。しかし、義姉は自信に満ちた表情で大きく頷く。この自信はリゼに対する信頼からくるのだろうか。リッカはエルナのリゼに対する揺るぎない自信を眩しく思った。
エルナの言葉でリッカの心はほんの少しだけ軽くなった。しかし、リッカは再び眉根を寄せる。
「でも、今回のミーナさんからの依頼は観賞用のアイテムだから、ほとんど魔法を使わないのです。ですので、新しい知識とかは……」
リッカは、今回の観賞用アイテムに関する依頼についてどうすべきか判断がつかなかった。そんなリッカの様子にエルナは微笑む。
「ちなみに、どのような物をお造りなのですか?」
リッカはエルナの問に昨日出来たばかりの試作物を見せた。小さなガラス瓶を受け取ったエルナは顔を綻ばせる。
「まぁ、可愛らしい」
「この水晶に触れると瓶の中で微弱な風が起こって、瓶底に積もっている粉が舞うのです。イメージは雪の中に咲く一輪の花です」
リッカの回答にエルナはなるほどと頷く。
「雪が舞うなんて、リッカさんがお持ちになっている氷精花のようですわね」
エルナの言葉にリッカは頷いた。
「はい。ミーナさんはアレを買い取りたいと仰ったのです。でも、魔法で維持しなければならないので、あまり売り物には適さないから……」
エルナはリッカの話を聞きながら思案気な表情を浮かべる。そして口を開いた。
「こちらは、もうミーナ先生にお見せしたのですか?」
エルナの質問にリッカは首を振る。リッカの反応を見たエルナは花が咲いたようにパァと顔を輝かせた。
「でしたら、こちらはもう少し改良致しましょう!」