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新人魔女と師匠の間に起きたわずかな軋轢(5)

 リッカの言葉にリゼは顔を顰めた。そんなリゼに、リッカは付け足すように説明を続ける。セバンたちがこのシーソーで遊ぶことで風を起こし、作業場の空気の循環を図ることができるのだと。


「そもそもだが、なぜ作業中に遊ぶのだ?」


 リゼのもっともな質問にリッカは、さも当然という顔で答える。


「だって、セバンたちは四六時中ここで作業をすることになるのですよ。だったら、少しでも楽しく作業してほしいじゃないですか。そのうえで、作業効率を上げるのです」


 リゼはリッカの答えに呆れたような顔をする。しかし、それ以上追及はしなかった。代わりにシーソーに近づいて手で軽く押す。するとシーソーが上下に少し動いた。シーソーが揺れ動く度に周りの空気がふわりふわりと動く。その感触にリッカはうんうんと満足そうに頷いた。


 リゼがさらに何度かシーソーを押し揺らしていると、セバンたちは興味を持ったのだろう。あれだけ遠巻きに見ていたリゼの足下へわらわらと近づく。リゼは近づいてくるセバンたちに一瞬戸惑うような表情を見せたが、リッカの期待するような眼差しに根負けして、足下へやって来たセバンを一体そっとつまみ上げシーソーの上へ乗せた。


 セバンを乗せたシーソーはリゼが軽く押しただけで勢いよく揺れる。その様子を見て残りのセバンたちが我もわれもと飛び跳ねる。リゼは大きく溜め息を吐くと、セバンたちをつまみ上げて次々とシーソーへ乗せてやる。やがてセバンたちはシーソーの扱いに慣れ、各々が思い思いにシーソーを楽しみ始める。その様子にリゼが僅かに笑ったような気がした。


 リッカはリゼの意外な反応に目を瞬いた後、嬉しそうに微笑んだ。予想以上の副産物だ。これからはリゼのセバンたちに対する扱いも柔らかいものになるだろう。セバンたちがシーソーで遊ぶのを黙ってみているリゼの隣に立ちリッカは改めて礼を述べた。


「リゼさん、ありがとうございます。これからはセバンたちと仲良くしてくださいね」


 リゼはリッカの言葉に「ふん」と鼻で返事をする。そんなリゼの様子に苦笑しながらも、リッカは手を叩いてセバンたちに指示を出す。


「さあ、みんな。これからはリゼさんの作ってくれたこの遊具をフル活用して、効率よく作業してね」


 リッカの指示にセバンたちはシーソーからピョンと飛び降りるとそれぞれの持場へわらわらと駆けて行く。その様子にリッカはニコニコ笑う。

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