新人魔女に新たな依頼(8)
「雪の降る保存容器なんだけど」
ミーナの言葉にリッカは頷く。
「はい。氷精花のことですよね」
「そう。それ」
ミーナは嬉しそうに手を合わせた。
「あのね、やっぱりあれをうちの店で扱わせてもらうことは出来ないかしら?」
「え?」
リッカは驚いて声を上げる。そんなリッカにミーナはにっこりと微笑む。
「以前にも言ったけど、あのアイテムは素材としてはもちろん、観賞用としてもとても素敵だと思うの。澄んだ花の上にチラチラと降る雪。ああいう物はこれまでに見たことがないの。絶対に人気が出ると思うのよ」
興奮して話をするミーナに、リッカは申し訳なさそうに頭を下げた。
「ミーナさん、ごめんなさい。そのご提案は受けられません」
リッカの返答に、ミーナはハッと我に返ったような顔をする。そして、すぐに肩を落とした。
「そうよね……。あの時も良い反応をしてなかったものね。貴重な素材だし、やっぱり無理か」
ミーナのがっかりした顔を見てリッカは申し訳ない気持ちになる。しかし、無理なものは無理なのだ。
「本当にごめんなさい。氷精花が貴重な素材ということもそうなのですけど、あれは、花に凍結魔法をかけたうえで、瓶にも雪が降るように魔法が書けてあるんです。だから、魔力が切れてしまったら花も雪も溶けてしまうんです」
リッカの答えにミーナは項垂れる。
「そっかぁ。それじゃあ、売り物としてはダメねぇ」
リッカは再度頭を下げた。すると、ミーナは少し寂しそうに笑った。
「いいのよ。気にしないで」
ミーナの言葉にリッカはほっと息を吐いた。しかし、ミーナの気持ちに応えられないことがリッカの気持ちを重くする。どうしたものかと考えを巡らせていると、ある考えが閃いた。
「ミーナさん。ただの観賞用で良いということでしたら、中身を変えてみるのはどうでしょう?」
「中身を変える?」
リッカの提案にミーナは首を傾げていたが、しばらくしてパッと顔を輝かせた。
「何かいい案があるってことね」
それからしばらくの間二人は、氷精花に代わる商品のアイディアについて話し合った。気がつけばラウルの店は午後の営業が開始され、店内は多くの客で賑わっていた。店の外まで行列ができているのを見て、リッカとミーナは慌てて話を切り上げる。
「お店が忙しい時間にこれ以上席を独占してラウル君に迷惑をかけてもいけないから、続きはギルドで話しましょうか。契約のことも含めて」
ミーナの言葉にリッカは元気に頷いた。
「はい」